終身雇用は今後どうなる?デメリットや成果主義への移行について解説

日本企業の敢行だった「終身雇用」。一度企業に入社後、定年を迎えるまでずっとその企業で働くことを指します。しかし近年、転職者の活躍に注目が集まっています。日本の職場は新たなフェーズに突入したともいわれています。この記事では、終身雇用の今後などいについて解説します。

終身雇用制度は、戦後の高度経済成長期から日本の企業・労働者を支えてきた重要な人事制度です。しかし昨今、「終身雇用制度の崩壊」といったニュースが多く飛び交うようになり、実際に「成果主義」へとシフトする企業が増えています。
2019年には、日本を代表する自動車メーカーであるトヨタ自動車の豊田章男社長が「なかなか終身雇用を守っていくのは難しい局面に入ってきた」と述べ、話題になりました。
 
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もそも終身雇用制度とは、企業が従業員を採用したあと、定年を迎えるまで正社員として雇用し続ける人事制度を指します。戦後の高度経済成長期において、安定した労働力を確保したい企業と、長く働くことで待遇がよくなる制度に魅力を感じた従業員のニーズが合致し、日本独自の文化として根付いてきました。

「終身雇用」とよく対比されるのが、「成果主義」です。
 
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日本企業に浸透している終身雇用制度では、勤続年数に応じて従業員の待遇がよくなっていきます。また年功序列で昇進がしやすく、企業側の事情で解雇されることはほとんどありません。一方、海外企業に多い成果主義では、待遇はすべて従業員自身のパフォーマンス次第です。年齢と階級には関係がないため、年下の上司のもとで働くことも。また、企業への貢献度合いが低いと判断されれば、突然解雇されるリスクもあります。

日本では、大学卒業後に1つの企業で定年まで働くのが一般的でした。最近では転職や独立をするケースも増えていますが、まだ割合としては高くありません。一方海外では、よりよい待遇を求めて複数回転職するのが当たり前です。業績向上を目指す企業側としても、成果主義の採用は合理的だといえるでしょう。

本記事では、崩壊しつつあるといわれる終身雇用が今後どうなるのか、そのデメリットや成果主義への移行について解説します。
 
 

終身雇用がもたらすデメリットとは | 企業・従業員の双方に悪影響?

高度経済成長期には、企業・従業員の双方に大きなメリットをもたらした終身雇用制度。昨今では、そのデメリットが明るみに出ることが多くなっています。ここでは、企業側・従業員側の2つに分けて、終身雇用がもたらすデメリットを見ていきましょう。
 
 

終身雇用が「企業」にもたらすデメリット | 市場競争を生き残れない

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終身雇用制度は、従業員を安定的に確保しやすい反面、企業としての競争力を失う危険性があります。まず、能力の良し悪しにかかわらず全従業員を雇用し続ける必要があるため、人件費が高騰しやすいです。また終身雇用の企業では昇進も年功序列になりやすく、若手の抜擢が進みません。結果、努力してもしなくても昇進スピードは変わらないため、従業員のモチベーションが削がれ、人材が育ちにくくなるでしょう。また新卒で一括採用した従業員を雇用し続けるため、多様性も生まれにくい環境になります。

終身雇用が「従業員」にもたらすデメリット | 人材としての価値が上がりにくい

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終身雇用は、その企業で働く従業員にもデメリットをもたらします。年功序列が浸透しているせいで、若いうちから出世できる可能性は低く、成果を上げようというモチベーションは湧いてきません。また年功序列での昇進の結果として、能力の低い人物が上司になることも珍しくないでしょう。さらに、定年までの雇用が約束されているぶん、会社都合の異動にも不平・不満を言いづらい環境であり、高齢になってからの単身赴任も十分あり得ます。モチベーションが感じられず、上司からの学びも少ない環境であれば、人材としての価値を上げるのは難しいでしょう。

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企業・従業員双方にとってのデメリットで見た通り、終身雇用の企業では年功序列が浸透しており、エスカレーター式に順次昇進していくシステムです。結果、企業内の人材は同質化し、イノベーションが起こりにくい組織となります。また、勤続年数の長い社員の待遇・賃金がよくなり、若手社員の待遇は低くなる傾向にあります。

終身雇用は今後どうなる?成果主義やフリーランス採用へのシフト

高度経済成長により多くの企業が右肩上がりの業績だったころには、終身雇用でも問題はありませんでした。しかし昨今、人口減少に伴う市場の縮小やグローバル競争に直面する日本企業においては、終身雇用のデメリットをカバーしきれなくなっているのです。そこで、日本企業のなかでも成果主義やフリーランス採用に舵を切る企業が増えています。
 
 

フリーランス採用がもたらすメリット | 企業・個人ともに自由度が増す

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正社員ではなくフリーランスとして稼働することは、企業・労働者双方にさまざまなメリットをもたらします。企業にとっては、必要なときに必要な期間・人数だけ採用することで、終身雇用では膨らみがちな人件費を押さえることが可能です。さらに、正社員であれば社会保険料などを従業員と折半して負担する必要がありますが、そういったコストもかかりません。労働者側にとっても、フリーランスとしての報酬は会社員時代よりも増えやすく、働く場所や時間の自由度も増します。通勤も不要なため、家族との時間を大切にしながら働けるでしょう。さらに、会社に頼らず生きていけるため、急な出張や転勤に振り回されることもありません。

フリーランス採用は、企業・労働者双方の自由度を増す魅力的な選択肢だといえるでしょう。実は、アメリカでは2020年時点ですでに労働者の36%がフリーランスとなっています。今後日本でもフリーランス人口がさらに増えていく可能性は高いといえます。
 
 

在宅ワークの浸透に伴い加速する成果主義へのシフト | フリーランスが主流に?

昨今、新型コロナウィルス感染症の拡大も影響し、在宅ワークが定着してきました。その結果、重要になりつつあるのが「その社員がどれだけの成果を上げているか」を厳正に評価することです。個々の社員が独立して働く場面が増えれば、良くも悪くも個々の社員の「人柄」は見えづらくなり、代わりに給与に見合った貢献ができているのかといった観点で見られる機会が増えます。つまり、成果主義へのシフトが加速する可能性が高いのです。

リモートで働く労働者を適切に管理するには成果主義が合っており、相性のよい働き方として「フリーランス」の採用が主流になるかもしれません。終身雇用が崩壊しつつある昨今、アメリカのようにフリーランスとして働く労働者の割合が急激に高まっても不思議ではないでしょう。
 
 

まとめ | 終身雇用の崩壊を前提として、人材価値を高めることが大切

本記事では、日本企業に深く根付いた人事制度である終身雇用について、そのデメリットや成果主義への移行の状況を解説しました。

筆者自身、終身雇用・年功序列の文化が色濃く残る企業で10年近く勤務しました。その後フリーランスになって3年経ちますが、会社員時代と同程度の収入を確保できています。「フリーランスになる」というと収入面のリスクに目を向けがちですが、社外の有能な人材を求めている企業は意外と多いものです。

振り返ってみれば、フリーランスとしての業務にも会社員時代の知識・経験は存分に生かされています。すぐにフリーランスになるつもりがなくても、会社の業務を通じて人材価値を高める努力を続けていれば、終身雇用が崩壊しても収入に困ることはないはずです。