テレワークは廃止?継続?アフターコロナにおける在宅勤務のメリット・デメリット

新型コロナウイルスの感染拡大をきっかけに、多くの企業がテレワークを導入しました。しかし、ワクチン接種の進展や感染状況の改善に伴い、テレワークを廃止するか継続するかという選択が迫られています。テレワークは働き方改革の一環として、生産性やワークライフバランスの向上に貢献するというメリットがありますが、一方でコミュニケーションや管理の課題や、メンタルヘルスやセキュリティのリスクというデメリットも存在します。

イーロン・マスク氏率いるX社(旧:Twitter社)をはじめ、海外企業ではテレワークを全面的に廃止したうえで、条件に同意しない社員に対するレイオフも進んでいます。 新型コロナウイルスの感染拡大から3年以上が経ち、国内でも新型コロナは5類に移行。こうした状況下で、アフターコロナにおける在宅勤務のメリット・デメリットを改めて整理し、継続するべきか否かを検討する時期に差し掛かっています。

在宅勤務のメリットとしては、生産性やワークライフバランスの向上に貢献する点が挙げられます。その一方で「コミュニケーション不足が業務の進捗に影響することがある」という一面もあります。今回はアフターコロナにおける在宅勤務のメリット、デメリットを改めてご紹介します。
 
 

減少傾向にある海外企業のリモートワークとその理由

アメリカのテック業界を題材に、まずは「海外でなぜリモートワークが減少傾向か」を1つ1つ見ていきましょう。結論から言えば「レイオフおよび充実した退職パッケージ」との関連性が強いです。
 
 

テック業界におけるレイオフ

テック業界では、2023年2月だけでもAmazonやMeta、Alphabet(Google)に加え、DellやYahoo!など多くの企業がレイオフを発表し、10万人以上が一時失業する見込みです。さらに、マッキンゼー・アンド・カンパニーも大規模なレイオフを行いました。
 
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テック業界のレイオフはいま大きな問題となっています。今後はコンサルティング業界でもレイオフが進む可能性が高いと言われています。

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海外企業ではレイオフの際には充実した退職パッケージもセットであることが慣例で、なおかつ業績が回復次第、再雇用することも前提とされています。

逆に言えばレイオフではなく、自主退職であれば手厚い退職パッケージは不要です。
労働者にとっては残酷ですが、在宅勤務を意図的に禁止することで「オフィス稼働率を上げつつ、出社を嫌がる社員の自主退職を促し、レイオフにかかるコストも節約している」という側面があると言えるでしょう。
 
 

テレワークの生産性に対する懸念の大きさ

また企業によっては、テレワークの生産性に対して懸念を持っているケースもあると考えられます。その最たる例が、冒頭でも述べたイーロン・マスク氏率いるX社(旧:Twitter社)。
 

マスク氏が買収する前のTwitter社は、たとえば2021年12月期の売上高は50億7748万ドル(約7000億円)もあったが、純損失は2億2141万ドル(約310億円)の赤字。運営チームの人件費、エンジニアの研究開発費、マーケティング部門の報酬や管理部門の費用など総じて「人件費」でほぼ全ての売上高が消えてしまう状況にありました。

引用元: DIAMOND online

このように人件費が異様に高騰している企業では「まずはオフィス回帰し、働き方を見直し生産性を高める努力を最大限に行う」「方針に同意できない社員はレイオフしていく」という経営方針は、ドラスティックではありますが合理性はあるでしょう。
 
 

国内におけるテレワークの普及状況と現場の懸念

国内では職種や地域によってテレワークの実施状況や普及率にばらつきがあるものの、特に都市部では定番の働き方としてある程度定着しています。ただし少しずつ実施率は低下傾向にあります。
 
 

都内企業のテレワーク実施率は51.7%(2023年1月時点)

東京都産業労働局によると、都内企業のテレワーク実施率は2023年1月時点で51.7%であり、依然として高い割合です。しかし、前回調査から実施率は減少傾向にあり、在宅勤務からオフィス勤務に戻す動きも見られます。

参考:東京都公式ホームページ
 
 

全体的にはテレワーク実施率はじりじりと下降傾向

公益財団法人 日本生産性本部が2023年1月に公表した「第12回 働く人の意識調査」によると、テレワーク実施率は16.8%という結果となり、2020年5月以降、四半期毎にアンケートを実施する中で過去最低に近い数字となりました。
テレワークの実施率は、2020年5月の実施率31.5%をピークに、新型コロナの感染拡大の波が来るたびに増加する傾向にありましたが、増加率も徐々に小さくなりじりじりと低下し続けています。
 
 

テレワークではなく「出社」に戻す企業の狙いとは?

テレワークではなく「出社」に戻す国内企業の狙いとしては、やはりテレワークへの対応が「緊急的なもの」であり、まずは働き方を正常なものに戻したいという点が上げられるでしょう。
 
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テレワークにはやはり顧客対応やチーム内でのコミュニケーションなど様々な課題もあります。リモート環境でもオフィス勤務と同じように成果を上げ続けるのは、業種や職種、社員のITリテラシーなどによっては難しい面もやはりあるのでしょう。

また、2023年に入り、ChatGPTをはじめとするチャットAIやAIツールが急速に進化。社員が最新ツールを使いこなせるよう教育するため、社員を「原則出社」に戻したがる会社が多くなっています。

加えて、会社がオフィスを維持したまま社員にテレワーク関連の費用を払うと、実質的に経費を二重払いしていることになります。感染症対策が不要になったいま、企業が社員にオフィスに戻って来てほしいと思うのは当然という面もあるでしょう。
 
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コロナ禍でテレワークが導入された当初は、通勤手当、オフィスの維持費が不要になるといった点で注目を集めました。しかし、テレワークで発生する費用は基本的に会社負担。光熱費や通信費、パソコンやデスクについても会社が負担する必要があります。

今後については基本的に出社するかハイブリッドワークをするかという方針のもと、仕事の内容や個人の状況に応じて在宅勤務を柔軟に許可することになるのではないでしょうか。

一方、成果主義で報酬が決まり、プログラムや原稿を作成するエンジニアやライターなどの仕事、または、基本的に一人で作業が完了できる人は、在宅勤務は効率的な方法となるでしょう。反対に、組織の一員として時間単位で働く人や指示待ちの人は在宅勤務に適していません。
 
 

アフターコロナにおけるテレワークのメリット・デメリット

アフターコロナにおけるテレワークのメリットとデメリットを簡単に説明します。
 
 

メリット

現在、場所にとらわれない働き方へのニーズは高まっている傾向にあり、在宅勤務という選択肢があることで、社員の定着率が高くなり、また優秀な人材を確保することにも繋がるでしょう。また、従業員は心身の健全な状態を維持しながら働くことができ、生産性が向上することも期待できます。
 
 

デメリット

「チームで働く人」や「業務を行うのに指示が必要な人達」にとっては、コミュニケーションが不足することでパフォーマンスが低下することも。また情報漏洩などのセキュリティリスクの問題や、光熱費や通信費等の費用の支払いなど、会社の負担が大きいのが現実です。企業側にとってはオフィス賃料と在宅勤務手当の、経費の二重払いという側面は否めません。
 
 

まとめ

テレワークには、企業側そして従業員側それぞれにメリット・デメリット両方の側面があると言えます。仕事の内容や、個人の能力、ライフイベントなど個人の状況に応じて、柔軟な働き方が選択できるようになることで、場所にとらわれない働き方を希望する個人のニーズを満たし、また優秀な人材を確保したい企業側にとってはテレワークを導入する効果が高くなるでしょう。