生産管理や事業拡大の「ボトルネック」とは?その原因とTOC理論による解消法

ボトルネックとは、生産管理や事業拡大において、全体のパフォーマンスを低下させる要因となるもの。ボトルネックを解消することで、生産性の向上や利益率の改善など、さまざまなメリットを得ることができます。

「ボトルネック」とは、生産管理や事業拡大の過程で、最も効率が悪くなる部分や要因のことです。ボトルネックが存在すると、それが全体のパフォーマンスを低下させてしまいます。では、どうすればボトルネックを見つけ出し、解消することができるのでしょうか?その答えは、「TOC理論」にあります。

「TOC理論」とは、「Theory of Constraints」という英語の略称で、「制約理論」とも呼ばれる経営思想です。TOC理論は、ボトルネックを特定し、改善するための具体的な手法を提供してくれます。この記事では、TOC理論の基本的な考え方と実践方法について解説します。ぜひ参考にしてみてください。
 
 

ボトルネックとは何か

ボトルネックとはビジネス及び生産活動のフローの中で、全体に対して「良くない影響を与えている箇所」を指す言葉です。
 
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たとえばフローA~フローCの中で、フローBの生産性が低い場合は「フローBがボトルネックである」と言えます。ちなみに「◎◎がネックだと思う」と言う時の「ネック」は、ボトルネックの略語です。

生産・開発分野でのボトルネックの定義・具体例

生産・開発における「ボトルネック」とは、先の例の通り、生産フローの中で「生産性が低い工程とその原因」を指す言葉として用いられます。生産性が低い工程がある場合には、他の工程と比べて何が問題なのかを洗い出す必要があります。
たとえば人員が足りないのであれば「人員不足」がボトルネックであり、その工程に導入している機器の性能に原因があれば「機器」がボトルネックです。
 
 

ビジネスにおける「ボトルネック」の定義・具体例

ビジネスにおける「ボトルネック」とは、もう少し広範に「物事を進めるうえで障壁となっていること」を指します。
たとえば営業成果が伸びていない際には、その原因を「広告の露出数」「問い合わせ数」「商談件数」「最終的なコンバージョン数」と切り分けて分析することが多いでしょう。問い合わせからの商談件数が十分な数であれば、ボトルネックは「広告」です。露出と問い合わせが多いにも関わらず、商談件数が少ない場合は「営業」がボトルネックです。
 
 

ボトルネックの主な原因とその影響

ボトルネックの原因は、人手不足、業務の属人化、非効率的な業務フローなど、さまざまです。
 
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ボトルネックを解消するためにはまず原因を特定することが大切。それから適切な対策を取りましょう。

人手不足

まず典型的な原因には、やはり「人手不足」が挙げられます。たとえば先の「営業成果」を例にすると、問い合わせに対して十分に手厚いフォローアップができる「営業担当者」がやはり一定数必要です。

たとえば「営業担当者」が足りないのであれば、少ない営業担当者の数でも問い合わせに確実に対応し成約件数を伸ばしていく方策を練りましょう。その上で段階的に営業担当者を増やしていくことで、問題解決ができるでしょう。
 
 

業務の属人化によるボトルネックの発生

「業務の属人化」もボトルネックになりやすい状態です。この問題は特に2020年以降、新型コロナをきっかけにテレワークが浸透する中で浮き彫りにもなりました。

専門性の高い業務などは多くの企業で「その人でなければ、その業務を担当できない」状態に陥りがちです。するとその人が多忙であったり、テレワークで離れて仕事をし「周囲の人からは業務の進捗が確認できない」状態になると、他の業務もつられるようにして生産性が落ちます。

その個人の生産性を突然飛躍的に高めるというのは難しいものです。また「その人でなければ、その業務ができない」ということはその人は自社のビジネスにおいて重要なポジションでもあるでしょう。

まずは「現状の生産性」をベースに、いまあるアウトプットの中でどこまで自社の生産性を高められるか検討しましょう。その上で少しずつ過度に属人的な業務は無くしていけるように、段々と体制を整えていきましょう。
 
 

非効率的な業務フローの存在

たとえば「社内稟議」や「人事評価」など、業務そのものが生産性に寄与しているわけではない事務作業に過度に工数がかかっている場合、その作業もまたボトルネックになり得ます。具体的には社内稟議を通すためには「出社し、紙の書類にサインをする必要がある」といったケースや、人事評価に当たって「出社し、必ず対面で面談を行う必要がある」といったものです。
こうしたケースでは人事評価や社内稟議をオンラインで行う仕組みを作ると、大きく効率化できるでしょう。
 
 

ボトルネックを解消するためのTOC理論とその適用方法

こうした業務のボトルネックの解消に役立つのが生産管理のフレームワークである「TOC理論」です。
 
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TOC理論はエリヤフ・ゴールドラット氏の小説「ザ・ゴール ― 企業の究極の目的とは何か」で一躍有名となったフレームワーク。通常なら「生産能力の低い工程」が存在する場合、生産能力が高い工程に合わせて問題解決を考えるものです。しかしTOC理論はその逆で「生産能力の低い工程に合わせた問題解決」を提唱します。

① ボトルネックの特定とその優先度の決定

まずは工程の中で「ボトルネック」がどの箇所か、特定を行います。先の画像では「工程3」がボトルネック(制約条件)です。ボトルネックを特定したら「その工程に他の工程も合わせる」ことを最優先事項と定めます。

一般的な考え方だと、ボトルネックが他の箇所に比べて6割程度の生産性しかない場合は「4割も損をしている」と捉えます。しかしボトルネックをベースに物事をとらえることで「他の工程では4割も過剰なリソースがあり、まずはそれらを削減したり、別の作業に充てることができる」と考えるのです。
 
 

② ボトルネックの改善手法

ボトルネックの改善は「そのボトルネックを徹底活用し、フル稼働させる」ことから始めます。生産・開発分野で「工場の特定の工程がボトルネックである」場合は、その工程をフル稼働させます。営業担当者が少数しかおらず、商談件数がボトルネックの場合は「商談件数を現状のマックス」までまずは伸ばします。

その上でボトルネック以外の業務を、全てボトルネックに従属する形へと変更します。たとえばボトルネックに対して、それ以外の業務に携わる人材が過剰に多い場合、配置転換が次の段階として考えられるでしょう。
 
 

③ ボトルネックの処理能力を向上させる

まずはボトルネックの処理能力をフルに利用したら、次にボトルネックそのものの処理能力を向上させましょう。たとえば「商談件数を現状のマックス以上に引き上げる」には「移動時間が無駄である」とした場合、オンライン商談を全面的に導入すると良いでしょう。

また「紙の書類へのサイン」などが無駄な場合は、電子稟議などワークフローシステムを導入すると良いでしょう。より簡易的なもので良ければ必要な時にだけオンライン会議を行い、その会議の議事録や録画データを「その企画や各種提案に対する承認」の代わりとして扱うのも一案です。
もちろんこの他にも、そのボトルネックが「人員不足」が原因であれば増員したり、機器の刷新が必要であれば機器を入れ替えるのも良いでしょう。
 
 

④ 新たなボトルネックへの対応を行う

全体のワークフローの中で、特定のボトルネックへの対応を行うと、また別のフローが新たなボトルネックとなることがあるものです。新たなボトルネックが生じたら、そのボトルネックに全体を合わせたうえでまた同じ流れでの改善を繰り返していきましょう。
 
 

ボトルネック解消の具体的なアプローチ

ボトルネックを解消するための具体的なアプローチは以下の通りです。
・社内コミュニケーションがボトルネックとなる場合
・アナログな業務がボトルネックとなる場合
 
 

社内コミュニケーションがボトルネックとなる場合

さまざまな企業でよく聞かれるボトルネックは「上司とのコミュニケーション」です。典型的な例は「上司が多忙であり、各種施策の承認を取るのに時間がかかり、施策そのものも後ろ倒しになる」というものです。

こうした場合、まずはボトルネックに合わせて全体を最適化。「上司のコミュニケーションが取れない限り、動くことができない人員そのもの」を最小に抑えることから始めると良いでしょう。
その上でボトルネックの処理性能を上げていきましょう。具体的には「承認作業は簡易化できないのか」などを検討していくと良いでしょう。
 
 

アナログな業務がボトルネックとなる場合

紙の書類による業務や対面でのミーティングの多さなどがボトルネックとなっている場合、いきなり「全ての業務を電子化しましょう」と稟議を出しても、提案は通りづらいものです。「アナログな業務」に重要性を感じている人も中にはいるためです。
よってまずは「アナログな業務での生産性」を可能な限り高め、なおかつそのボトルネックの生産性を最大限に高めるための材料として電子化を進めていくと良いでしょう。
 
 

まとめ

今回は「ボトルネック」とはそもそも何か、そしてTOC理論による「ボトルネック」の解消法についてを解説しました。生産性の低いボトルネックとなる工程に、他の工程を合わせるという、一見非効率に見える方法でパフォーマンスの最大化を図る手法となります。ビジネスにおける生産性向上の手法として頭に入れておき、ご自身の業務でも活かせる部分があれば取り入れてみては如何でしょうか。