AIによって「なくなる可能性がある仕事」とDX化が加速する中で「人間に求められる仕事」とは?

AIの普及により人間の働き方改革が進み、10~20年後には一般事務、ライター、銀行員などの仕事がなくなるとも言われています。実際にどのように変わっていくのか、AIを導入した企業例や今後も必要とされる言われる職業などともに紹介していきます。

AI(人工知能)の進化と普及もあいまって、DX(デジタル・トランスフォーメーション)が近年は一層加速。これにより、人間の働き方が大きく変わってきています。では、具体的にどのように変わるのでしょうか?

この記事ではAIの普及による働き方の変化と、「AIによりなくなる仕事」「今後も人間に求められる仕事」について解説します。
 
 

10年〜20年後には「AIが49%の仕事を代替」?

IT技術やAIの進化により、10~20年後には多くの仕事がAIに代替される、つまり「人間の仕事を奪われる」可能性があります。

以下は、野村総合研究所が2015年に発表した、米オックスフォード大学との共同研究結果による、人工知能やロボット等による代替可能性が高い労働人口の割合を示したグラフ。
 
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調査によると、2015年時点の10~15年後に日本の労働人口の49%がAIやロボットなどに代替される可能性が高いそう。ちなみにアメリカは47%、イギリスは35%が代替されると予測されてます。調査から8年が経った現在、人間の労働がAIやロボットに置き換わったという明確な実感はありませんが、ChatGPTが急速に広がったことを考えると、2030年までに本当に調査結果の通りになる可能性も考えられます。

研究結果はあくまでも仮説ですが、現実的にAIの普及により人間の働き方は大きく変わってきています。
 
 

AIの普及で働き方はどう変わる?

では、実際にAIの普及で働き方はどう変わるのでしょうか?
 
 

「労働力としてのAI」の進化

AI機能を搭載したツールやサービスを導入することによって、作業の自動化が可能となります。たとえば、会計データの入力やチェックなどの単純作業、企業ホームページのカスタマーサポートなどの業務はAIで自動化できます。労働人口が減少している中、AIを労働力として活用することで人手不足問題を解消できる可能性があるでしょう。
 
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労働人口は年々減少。2016年には6,648万人だった労働人口は、2040年には5,268万人にまで減少すると予測されています。

ChatGPTなどの生成AIは「人間の完全な代替」にはなり得ません。ただし、例えば、社員が生成AIを活用することで、作業の効率化を図って従来より1.5倍の生産性を生み出せるようになれば、労働力人口が減る中で、生産性を確保する一助にはなるでしょう。
 
 

AIによるDX化の加速:DX化とAIの関係性とは?

DX化を加速させるためには、膨大なデータを活用する必要があります。そのデータ分析を担っているのがAIです。
 
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DX化において、ビックデータをAIに学習させることで未来やリスクなどの予測や判断が可能に。AIを活用することによって、DX化を加速させます。

従来、業務などに関する詳細なデータを集計し、高度な判断、意思決定やディレクション、マネジメントなどの業務は人間が行ってきました。しかしビッグデータを集計し、高度な判断を下すのはAI(人工知能)が最も得意とする領域の処理です。そのため、データの認識や活用、その先にある「コンテンツ作成」や「事務作業」などは、AIに段階的に置き換えられていくと予想されます。
 
 

AI規制の現状

一方で、AIに関しては様々な懸念点もあり、EU(欧州連合)では2023年6月に「AI規制案」が採択されています。たとえば懸念されているのが、命や基本的人権に脅威をもたらす可能性のあるAIシステムや社会的・経済的な利益に影響を与える可能性のあるAIシステム。

AIは、あくまでも「人間の基本的な権利や民主主義の価値観に沿ったものであるべき」という主張のもと、倫理的な問題やプライバシー保護に関する規制もはじまっています。AIを活用した文書や画像生成の明示を義務化すべきといった議論も重ねられています。
 
 

AIを働き方改革や業務効率化に取り入れ始めた企業の例

すでにAIシステムを導入している企業も多くあります。ここでは、AIを働き方改革や業務効率化に取り入れ始めている企業をご紹介します。
 
 

パナソニックコネクト:社内向け生成AIが5,800回/日、使用される

B2Bソリューション事業を行っているパナソニックコネクトは、2023年2月17日からChatGPTなどを活用した社内向け生成AIを導入。社員はいつでもアクセス可能で、導入から3カ月間後には1日あたり約5,800回利用されるように。

従来、3時間かかっていたプログラミング業務におけるコーディング前の事前調査が5分に短縮できるなど大幅に生産性が向上しています。

3カ月で26万回も利用された社内向け生成AI。さらなる利用拡大を図るパナソニックコネクト
 
 

JR西日本:本社社員への生成AIチャットボット導入

JR西日本グループは、働き方改革のひとつとして2023年10月16日より社員を対象に生成AIチャットボットを導入。業務効率化と業務品質向上を進め、今後は生成AIを鉄道システムに組み込むなど、さらなる生産性を生み出していくとしています。

西日本旅客鉄道株式会社
 
 

10年~20年後「AIによってなくなる可能性がある仕事」5選

AIの大頭により、10~20年後には「なくなる可能性がある仕事」の例を5つ紹介します。
 
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AIでマニュアル化、自動化できる「ルーティン作業」はAIに代替され、人間が担当するものではなくなる可能性があります。

一般事務

データ入力や処理が主な業務である一般事務の仕事は、AIが最も得意としている分野。ルーティン作業はAIにより自動化でき、短時間で正確な処理ができることからAIに代替されると言われています。AIで自動化すれば、ヒューマンエラーを防ぎ、人件費も削減できるというメリットもあります。
 
 

銀行員

キャッシュレス決済が普及しているように、FinTechにより銀行業務もDX化が加速。さらに複雑な計算やチェック作業、ビックデータの処理はAIが得意とする分野です。正確性も高いため、将来的には具体的な商品提案やニーズに沿ったヒアリングといった人間にしかできない業務を除き、銀行員の仕事はAIに代替されると予想されます。
 
 

電話販売員(テレマーケター)

電話販売員(テレマーケター)は、顧客への営業アプローチを電話で行う役割を担っていましたが、その役割がAIチャットボットやAIによる自動音声応答システムが担うようになる可能性が大きいです。質問に対し、機械学習したAIが自動的に適切な回答例を提示したり、顧客分析などをAIが担うようになるでしょう。人間のテレマーケターが担当する業務は、AIによる対応では満足度が低いと予測される一部の顧客への「人間的な対応」となるかもしれません。
 
 

ホテルのフロントマン

受付業務やホテルのフロントマンは、機械やロボットに代替される可能性が高い仕事のひとつです。すでに受付システムとしてタッチパネルや自動精算機を導入し、受付を無人化しているところも多く、人が対応する必要がなくなってきています。
 
 

ライター

2022年11月に登場した生成AIのChatGPTにより、ワードをいくつか入力するだけで自動で文章を作成することが可能に。校正やチェックもAIに任せれば、生成AIだけで記事を作ることも可能です。とはいえ、取材や人間の感情を汲み取った文章を書くなどAIにできない部分もあります。
 
 

AIによる働き方改革や業務効率化が進む中で「人間に求められる仕事」とは?

AIを導入すれば、大幅に業務効率化や人件費削減が叶いますが、そんな中でも「人間にしかできない仕事」もあります。ここでは、AIによる働き方改革や業務効率化が進む中でも「人間に求められる仕事」とはどんなものかご紹介します。
 
 

身体や精神に関する仕事

先述したように、倫理観から人の命に関わる分野でのAI導入については議論や規制がされているところです。診断や問診にAI技術が応用されることはあっても、人の命に関わる医者の仕事がAIに代替されることはないでしょう。同じように、個別への対応や臨機応変な対応が必要となる看護師や介護士などの仕事もなくなる可能性は低いと言えます。
 
 

高いヒューマンスキル、コミュニケーションスキルが求められる仕事

人間関係を形成したり、人としての成長にかかわる保育士や教員といった仕事は、一部の業務をAIで効率化することはあっても、すべての業務がAIに代替される可能性は低いと言えます。カウンセラーなど、相手の気持ちを汲むなど高いヒューマンスキルやコミュニケーションスキルが必要な職業も、残っていくでしょう。
 
 

取引先との関係性構築が必要な仕事

営業やコンサルタントといった取引先との関係性構築が必要な仕事は、今後も残っていくと予想されます。効率化を図るだけならAIでも十分ですが、相手の求める提案をしたり、状況に応じてフォローするといったサポートは人間にしかできません。
 
 

クリエイティビティが求められる仕事

AIはプログラムされたことや学習したことについては得意ですが、0から一を生み出すクリエイティブな発想が求められる仕事には向いていません。たとえば、画像生成AIにより簡単にプロ並みのアートを作りだすことが可能な一方、逆にいえば学習データがないとアートを生成できないという面もあります。独自の発想が必要になるクリエイティブな職業は、人間にしかできない仕事と言えるでしょう。
 
 

AIによって生み出される新しい仕事の例

AIの普及によってなくなる仕事がある一方、AIによって新しく生み出された仕事もあります。
 
 

プロンプトエンジニア

プロンプトエンジニアとは、ChatGPTや生成AIから最適な回答を得るための「指示や命令」を出すエンジニアのことです。たとえばChatGPTでは、質問の仕方によって得られる回答が異なるため、どのようなプロンプトを与えるかが重要です。

今後はAI知識やプログラミングスキル、自然言語処理を理解し、最適なプロンプトを生成できるプロンプトエンジニアの需要が高まる見込みです。
 
 

アノテーター

アノテーターとは、AIに機械学習させるために必要なタグつけやメタデータを付ける技術を持った人のことです。この作業をアノテーションと呼び、ビッグデータの管理には必要不可欠です。アノテーターは近年注目を集めはじめた職業のひとつで、AIの精度を高めるためにも、専門知識を持ったアノテーターが求められています。
 
 

AIエンジニア

AIエンジニアとは、AIやロボットのシステム開発や、データ解析などを行う職業です。AIに機械学習させるプログラムをまとめたり、AI分析を行ったりします。専門的な知識であるプログラミングやデータベース運用、機械学習などについてのスキルが求められる職業で、AIの普及により需要が高くなっています。
 
 

まとめ

AIの進化と普及により、これまで人間が行ってきた仕事がなくなる可能性があるのは事実です。一方で、人間にしかできない仕事も様々あり、AI技術を活用した新しい仕事の需要も高まりを見せています。
AIと共存していくためにも、新しい技術を取り入れながら人間に求められる仕事の価値を見出していくと良いでしょう。