1日の労働時間って労働基準法上は何時間まで?基準と上限、注意点:在宅勤務はどう管理する?

1日の労働時間は労働基準法によって定められています。この記事では、その基準と労働時間の上限を解説します。

1日の労働時間は労働基準法によって決められています。しかし、それが曖昧になってしまいがちなのが、在宅勤務やテレワーク。
 
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在宅百貨が2023年7月に在宅勤務の実態を調べたところ、在宅勤務中、「音楽をかける」「WEBサイト・アプリを見る」「洗濯」「テレビを見る」「掃除」などを、約20%~約33%の人が「やって良いと思い、やっている」ことが判明。
中でも「洗濯」については計36.5%の人が、「掃除」は計33.8%の人が「やって良いと思い、やっている」もしくは「やってはいけないと思うが、やっている」と回答していました。

こうした調査から改めて分かるのは、在宅勤務やハイブリッドワークが当たり前の働き方になるとオンとオフの境目が曖昧になりやすいということではないでしょうか。
特に在宅勤務の日は、ついだらだらと仕事をしてしまい、勤務時間が8時間を大きく超えることもあるのでは。
すると「そもそも8時間をはるかに超えて働くのは労働基準法から見て問題ないのか」という疑問がわきますよね。特に全社的に在宅勤務やハイブリッドワークを取り入れている場合、社員が労働基準法に反して長時間労働している可能性がある状況は、マネージャー層の方や総務、人事の方などにとって見逃せないことでしょう。

そこで今回は改めて1日の労働時間は何時間なのかを、労働基準法に照らし合わせて解説します。
 
 

労働基準法上の1日の労働時間の上限は「原則8時間」

労働基準法第32条によると、1日の労働時間の上限は8時間です。これを超える労働は残業となり、追加の手当、つまり残業代を支払う必要があります。
 
 

所定労働時間、法定労働時間、実労働時間の違い

所定労働時間は、企業が就業規則で定めている、休憩時間を除く始業時刻から終業時刻までの時間のこと。
法定労働時間は労働基準法で定められた1日8時間、週40時間の労働時間。実労働時間は、実際に働いた時間を指し、これには残業時間も含まれます。
 
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たとえば所定労働時間が9時~17時と定められていて、12時~13時に休憩時間を取った場合、17時~18時の間は所定労働時間外ですが、法定労働時間内での労働となります。この場合は「法定内残業」となり、労働基準法上では時間外労働にはなりません。

在宅勤務、テレワークを行う場合も労働基準法の対象

在宅勤務やテレワークを行う場合も、もちろん労働基準法、最低賃金法、労働安全衛生法、労働者災害補償保険法などの労働基準関係法令が適用されます。
自宅で働く場合は、勤務時間と日常生活の時間が入り混じることになりますので、社員は会社と労働時間の管理や仕事の評価方法について、すり合わせを行う必要があります。

なお、厚生労働省によるテレワークにおける適切な労務管理のためのガイドラインには、労働時間の適正把握や安全衛生の確保など、在宅勤務の実施に際して企業と労働者が留意すべき点が記されています。
 
 

残業時間を含めた1日の労働時間の上限はどれくらい?

1日あたりの残業時間の上限は決められていませんが、1ヶ月あたり、1年あたりでの上限は決められています。
 
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結論から述べると、基本的に残業時間の上限は月45時間、年間360時間。特別な理由がある場合は、年間720時間。単月100時間までですが、複数月の平均残業時間は80時間でなければなりません。

時間外労働には36協定の締結が必要

36協定は、労働基準法第36条に基づき、法定労働時間を超える残業や休日労働を行う際に必要な労使間の協定。先述した通り、1日の労働時間は8時間と決められていますが、36協定を結ぶことで、企業は社員に時間外労働を頼めるようになります。
 
 

時間外労働は月45時間、年360時間が原則

先述した通り、1日あたりの明確な残業時間は決められていません。しかし、時間外労働、残業は原則として月45時間、年360時間と定められています。
 
 

「月45時間、年360時間」の原則に当てはめると労働時間の上限は?

月45時間、年360時間の原則に基づくと、1日の労働時間の上限は法定労働時間の8時間に加えて、平均的に1日あたりの残業時間が2時間以内となります。とはいえ、残業する日としない日があるため、「絶対に1日2時間まで」ということはありません。

また、特別な事情がある場合には、月100時間未満、2〜6ヶ月平均で80時間以内、年720時間以内という条件で、残業時間を延長できます。
 
 

労働時間が1日6時間を越える場合は「休憩」が発生する

労働基準法第34条では、1日の労働時間に対して必要な休憩時間が定められています。
 
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労働基準法第34条では、労働時間が6時間までなら休憩は不要ですが、6時間~8時間以下の場合は少なくとも45分。8時間以上の場合は少なくとも1時間と定められています。

1日の労働時間が6時間を超えて8時間以内の場合

従業員の雇用形態や立場に関わらず、1日の労働時間が6時間を超えて8時間以内の場合、少なくとも45分の休憩が必要です。この休憩は、まとめてではなく、1日の間に何回かに分けて取ることも可能です。
 
 

1日の労働時間が8時間を超える場合

こちらも従業員の雇用形態や立場に関わらず、1日の労働時間が8時間を超える場合は1時間以上の休憩が必要です。一般的にはお昼の1時間が休憩時間に当てられることが多いでしょう。この場合も小分けで休憩時間を取ることができます。
 
 

社員の労働時間はどう管理すればいいの?

実際に社員の労働時間の管理方法について、オフィス勤務の場合と在宅勤務、テレワークの場合でそれぞれまとめました。
 
 

オフィス勤務の場合

オフィスでの勤務においては、タイムカードやICカードを活用した勤怠管理システムを用いて、始業と終業の時刻をはっきりさせましょう。
オフィスの入退室記録や「出勤」「退勤」の打刻をきちんと確認することで、正確に各社員の労働時間を管理できます。
 
 

在宅勤務、テレワークの場合

テレワークにおける労働時間の管理では、Slackやチャットワークに代表されるコミュニケーションツールを通じて上司への始業と終業時刻の報告を行うケースが多いです。勤怠管理ツールに自ら出勤時間と退勤時間を記録するケースもあります。
また企業によっては、テレワークの場合はサテライトオフィスへの出勤を推奨するケースもあります。この場合はサテライトオフィスでの入退室記録や「出勤」「退勤」の打刻によって管理することとなるでしょう。
 
 

まとめ

テレワークや在宅勤務の浸透によってワークライフバランスを意識した働き方を多くの人が取り入れられるようになった反面「1日の労働時間」が曖昧になっているケースも少なくないのではないでしょうか。
一方で1日の労働時間は労働基準法によって定められているため、労働時間の管理が雑になるのはビジネスパーソンにとっても企業側にとっても望ましいことではありません。
労働基準法を改めて見直したうえで、オンラインでの勤怠管理を強化したり「サテライトオフィス」の活用を推奨するなどしてテレワーク時代に沿った勤怠管理を行いましょう。

以上、コクヨが運営するテレワークメディア「在宅百貨」がお届けしました!