一人会社(ひとり社長)と個人事業主は何が違う?ひとり社長の給料ルールや働き方

一人会社(ひとり社長)とは、社員を雇わず、社長が一人で経営している会社のことを指します。個人事業主とはどう違うのでしょうか?この記事では、ひとり社長の給料や働き方についても解説します。

副業解禁やフリーランサーの増加といった近年の流れの中で、「一人社長」と呼ばれる形態が注目されています。一人社長とは、その名の通り「一人で会社を経営する社長のこと」。すると、そもそも「一人社長と個人事業主の違いって何?」「わざわざ一人会社を立ち上げる意味はあるのか」「どんな働き方なのか」気になりますよね。

そこでこの記事では、一人社長と個人事業主の違いなどを詳しくご紹介します。テレワークの普及やコワーキングスペースの広がりが、一人会社の立ち上げを後押ししている側面があり、いわば「注目のワークスタイル」や「新しい会社の形」と言えますよ!
 
 

一人会社(ひとり社長)とは?

一人会社(ひとり社長)とは、2006年の新会社法施行をきっかけに増えた会社形態。
新会社法によって最低資本金規制が「1円以上」、出資者の数も「1名以上」で創業できるようになったため、一人でも会社を立ち上げやすくなりました。
当然「一人会社」のため、社員は雇わず、社長がすべての業務を管理する必要があります。
 
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すべて社長の意思決定で会社が運用できるため、個人事業主と似ていますが、法人のため、信用度や節税効果が高い点がポイント。一方、設立や決算などの手続きはより複雑になります。

どうして一人会社を立ち上げて「ひとり社長」になる人が増えたの?

そもそも、どうして一人会社を立ち上げ、「ひとり社長」になる人が増えたのでしょう。大きく分けて、3つの理由があります。それぞれ見ていきましょう。
 
 

新会社法の制定

先述した通り、新会社法の制定により、一人会社の設立が容易に。旧商法では、株式会社を設立するためには資本金1,000万円、取締役3名が必要でしたが、新会社法では資本金1円、取締役1名で設立可能に。
売上金が増加した個人事業主が、ひとりで気軽に会社を設立できるようになりました。
 
 

法人登記が可能なコワーキングスペース等の増加

2024年現在、法人登記が可能なコワーキングスペース(シェアオフィス)が増えてきています。従来、会社設立にあたって「オフィスを借りる必要がない業種」であれば、「自宅の住所を登記先住所にする」ケースが多かったでしょう。しかしこの場合、法人の住所と代表者の自宅が一致するためプライバシーの問題があります。
その点、法人登記が可能なコワーキングスペースが増えたことで会社設立のハードルが下がったといえます。
 
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当メディア「在宅百貨」(コクヨ運営テレワークメディア)を手掛ける、コクヨが展開するコワーキングスペース「Creative Lounge MOV」でもプランによっては法人登記が可能です。

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コワーキングスペースを利用することで、さまざまなビジネスパーソンと知り合えるほか、ビジネスチャンスも増えるでしょう。
また一部の企業には「取引先を法人に限定している」ケースもあります。個人事業主との取引を増やすことは企業側にとっては少額取引が多数増えることを意味し、なおかつ個人事業主側の経理知識によっては請求ミスが多発するリスクもあるためです。
つまり法人登記によって「信頼」が生まれやすく、ビジネスチャンスが拡がるといえます。

副業解禁と働き方の多様化

副業の解禁が進んだのは2018年(平成30年)。政府が働き方改革の一環として副業を推奨し、モデル就業規則を改正。これにより、サラリーマンでも自分のスキルや、スキマ時間を活かして副業できるようになりました。

また、働く人のライフスタイルやニーズに合わせて、様々な働き方を選択できるように。テレワークや時短勤務、フレックスタイムなどの制度や施策が多くの企業や職場で導入されるようになり、空き時間や休日に勤務先の業務とは別にひとり会社で自分の事業を行う人も増えています。
 
 

個人事業主と一人社長はどう違うの?

個人事業主と一人社長の違いは、個人か法人かという点です。個人事業主は自分が全ての責任を負いますが、一人社長は法人が責任を負います。また、税制や経費計上などにも違いがあります。
 
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さらなる詳細は、続いての章から1つ1つ解説していきます。
 
 

【詳細】一人会社(ひとり社長)のメリット

一人会社(ひとり社長)のメリットは、自由な働き方ができることや、節税の手段になることなどです。
また前述の通り、個人と法人で「別人格」扱いになるため、代表者の法的な責任が限定される点も大きなメリットです。
 
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自由な働き方ができる

自由な働き方ができる点は、一人会社の魅力のひとつ。社長として勤務する以上、働き方や就業規則などを自分の裁量で決めることができます。「どこで、どのような仕事をするのか」や「テレワークに関する規則」なども自分で決めることができます。
ちなみに筆者もフリーランス経験があり、個人事業主から一人会社で法人成りした経験があります。たとえば「401k(企業型確定拠出年金)」の導入を決めるなど「個人事業主に比べ、法人ならではのメリットが大きくなるような仕組みづくり」を行いましたが、やはり法人格があるからこそできる工夫などがありました。
 
 

節税の手段になる

一人会社には国税の「法人税」に加え、地方税の「法人住民税」「法人事業税」などの税が課せられます。
ただし、これらの税率は所得税よりも低いです。また経費計上の幅も広がるため、節税の手段になります。
 
 

個人と法人で「別人格」扱いになる

一人会社では、会社と個人は法律上別人格として扱われます。そのため、会社がどれだけ資金調達や借り入れをしたとしても個人が返済義務を負うことはありません。
ただし、代表個人が借金の連帯保証人になっている場合は返済義務があります。とはいえ政策金融公庫や民間の創業資金でも、代表者個人に連帯保証を求めることはほぼ無いため「別人格」である点はやはり極めて大きなメリットと言えるでしょう。
 
 

融資を受けやすい

一人会社は個人事業主と比べて社会的信用が高く、個人事業主を対象としていない融資や助成金を受けやすい点もメリット。
公的な融資などはもちろんですが、たとえばエンジェル投資家から資金調達をする場合でも、投資家に対して出資に応じた株式を与える必要があることがほとんどです。つまり資金調達にも「法人格」は多くの場合で必要であり、個人事業主よりも事業を拡大しやすいです。
 
 

一人会社(ひとり社長)のデメリット

一人会社(ひとり社長)にはデメリットも存在します。
 
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記帳、仕訳けや税務申告の難易度が個人事業主よりも上がる

個人事業主が行うのは確定申告で、企業の税務処理よりもシンプルです。
ひとり会社の場合は法人税や法人住民税、法人事業税などの法人税の計算や申告も必要となります。
これらの作業は専門知識が必要で、時間が掛かります。そのため、税理士に依頼するのが一般的ですが、税理士に依頼する内容によっては税理士報酬が数十万単位で掛かってしまうケースもあります。
 
 

健康保険や厚生年金への加入義務が生じる

一人会社の社長は自身が立ち上げた法人から報酬を受けているため、健康保険や厚生年金に加入する必要があります。特に厚生年金は賃金に対する定率で決まるため、国民年金と比べて高くなりやすいので注意が必要です。
個人事業主時代に比べて、税負担や年金などの負担が重いように感じ「稼ぎづらい」と思えてしまう方もいるかもしれません。
 
 

ところで、 ひとり社長の給料はどうやって決めるの?

ひとり社長の給料(役員報酬)は、自分で決定できます。「会社員時代の倍の給料」などを自分に対して設定することも、その分の売上が見込めるならば十分に可能です。
とはいえ、所得税、社会保険料など税金を考慮しつつ、会社と個人の収益を最大化するように決めるのが望ましいでしょう。
 
 

ひとり社長の給料は「役員報酬」で経費扱い

ひとり社長で、社長が自分自身に払う給料は「役員報酬」に相当します。
基本的に毎月同額にすれば経費扱いにすることが可能。つまり、会社の利益から差し引くことができます。
利益から役員報酬を差し引くことで、法人税や法人住民税、法人事業税などの法人税の負担を軽減することができます。法人税が一番安くなりやすい適正な額の役員報酬を事前に計算し、自分の給料の額面に設定すると良いでしょう。
 
 

役員報酬は税務署からチェックされやすい!

一方、役員報酬は税務署からチェックされやすいというデメリットもあります。税務署は、役員報酬が適正かどうかを厳しく審査します。過度に高額な役員報酬や、ひと月だけ高くしてしまった役員報酬などは、経費として認められない可能性があります。
 
 

フリーランス時代よりも月収は上がる?下がる?

ひとり社長の月収が、フリーランス時代と比べてどう変わるかは、法人成りを考えている人にとってもっとも気になるところでしょう。
一般的には、会社を設立した直後は、経費や税金の負担が増えるため、月収は下がる傾向にあります。しかし、会社が成長し、利益が安定して出るようになれば、月収が上がる可能性があります。
 
 

一人会社(ひとり社長)のオフィスはどこに設ける?

ひとり社長はバーチャルオフィスやコワーキングスペース、レンタルオフィスなどに登記するケースが多いです。
たとえば、渋谷ヒカリエ8階にある「Creative Lounge MOV」にはコワーキングスペースや貸会議室、オフィスエリアなどがあり、利用プランによっては法人登記も対応してもらえます。

なお、Creative Lounge MOVについては以下の記事で潜入レポートを公開しているので参考にしてください。
【潜入リポート!#11】会話が生まれるコワーキングスペース!Creative Lounge MOV に潜入! -

【潜入リポート!#11】会話が生まれるコワーキングスペース!Creative Lounge MOV に潜入! -

【潜入リポート!#11】会話が生まれるコワーキングスペース!Creative Lounge MOV に潜入! -

在宅百貨編集部員が、オフィスと自宅以外のさまざまなサードプレイスに潜入し、その様子をリポートします! 第11回では、渋谷ヒカリエの8Fに位置するワークラウンジ、Creatve Lounge MOV に潜入!ぜひご覧ください!

一人会社(ひとり社長)の立ち上げに適するビジネスモデルの例

ひとり社長の立ち上げに適するビジネスモデルとしては、人材紹介、EC、請負業などが挙げられます。実店舗での接客が不要で、Web会議や各種クラウドサービスなどを活用することでオンラインで業務が完結できる事業が適しています。
 
 

人材紹介

人材紹介は「求職者」と「企業」をマッチングさせ、マッチング成立時に求人者(企業)から成功報酬を受け取ることで収益を得ます。
人材紹介業は開業ハードルが高いイメージがあるかもしれませんが、実は基準資産額が500万円以上あることなどの資産要件を満たしていれば一人会社での開業も十分視野に入ります。ちなみにコワーキングスペースでの開業も可能です。
求職者と企業のマッチングをWeb会議等で行う、オンライン専業の人材紹介会社も近年は増えています。
 
 

EC

フリマアプリやモール型ECサイトへの出店によるEC事業も、ひとり会社に適した事業の1つです。仕入れや在庫管理、発送の手間がありますが「在庫管理」「発送」などを手掛ける代行業者も数多く存在します。
つまりアウトソーシングを上手に活用することで、自らは仕入れに専念。梱包、発送を自らやらずに済むことも可能です。
 
 

請負業

請負業とは、企業から特定分野の業務の委託を受けるビジネス。委託の対象となる業務は企業、職種によって様々ですが「システム開発」「広告運用」「デザイン業務」などが代表的な例です。
特定分野の専門知識と経験がある場合、請負業であれば「仕入れ」などの初期投資がなく事業を始められるため一人会社に適しています。
 
 

まとめ

一人会社(ひとり社長)は、近年の副業解禁の流れや法人登記が可能なコワーキングスペースの増加を受けて「注目されるワークスタイル」や「働き方」の1つとして定着しつつあります。
加えてテレワークが新たな働き方として定着したことで、自宅やコワーキングスペースで「ひとりで仕事をする」のが当たり前になったことも大きいでしょう。ぜひコワーキングスペースで法人登記をしつつ、働きたい場合はコクヨが運営する「Creative Lounge MOV」の利用も検討してみてくださいね。

以上、コクヨが運営するテレワークメディア「在宅百貨」がお届けしました!