ビジネスにおける「ヒューマンスキル(対人関係能力)」とは?分かるようで分からない人間性の養い方

「ヒューマンスキル」とは、他者と円滑な関係を築き、コミュニケーションを図るために必要な能力の総称。ビジネスにおける成功で重要と言われているこのスキルについて解説します。

リモートワークやハイブリッドワークの普及により、「ヒューマンスキル」が改めて求められつつあります。ヒューマンスキル(対人関係能力)とは、人とのコミュニケーションや人間関係の構築に必要なスキルのこと。遠隔でも円滑に働くには、オンライン会議やビジネスチャットでのやり取りでも明確な意思疎通ができるだけのスキルが必要です。
単にツールを使いこなすだけでなく、それを使う人間の「ヒューマンスキル」も改めて重要ということです。
加えて「出社」する場合でも、ヒューマンスキルはもちろん重要です。仕事そのものが遠隔でできるならば、それでも出社する理由はコミュニケーションにあるためです。

この記事では、ビジネスにおけるヒューマンスキルの重要性と具体的なスキル、それをどう養うかについて詳しく解説します。
 
 

どうしてビジネスにおいて「ヒューマンスキル(対人関係能力)」が再注目されているの?

テレワークやハイブリッドワークが普及して直接顔を合わせる機会が減ってきたいま、それでもオフィスで働く最大のメリットは「コミュニケーション」といって過言ではありません。
 
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特に上司には部下の柔軟な発想などを下支えしたり、上層部や経営陣と若手を橋渡しするような能力が求められます。

また、生成AIによって高品質なアウトプットが比較的簡単に出力できる時代にもなりました。
するとAI時代でもなお人間がやるべきことは、柔軟な発想や「人間同士のコミュニケーション」です。つまり、やはり「ヒューマンスキル」が重要です。
 
 

ヒューマンスキル(対人関係能力)の種類一覧

ヒューマンスキルは、たとえば上司と部下の間でのやり取りに典型的に必要です。良好な関係を両者が築くには「相手の意図や気持ちを汲み取り、どう伝えるかを考える」ことが必要です。

・聞く
・見る
といった認識するスキルに加えて、

・話す
・身振り手振り
という行動するスキルも必要です。この「認識するスキル」「行動するスキル」はどちらもヒューマンスキルです。
 
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ビジネスにおけるヒューマンスキルはさらに細分化すると、以下のような種類があります。
 
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【1】ネゴシエーション

交渉や折衝を意味するネゴシエーションは、異なる利害や立場を持つ相手と合意点を見出すスキルです。目標達成と関係維持のバランスを取りながら、Win-Winの結果を目指します。効果的なネゴシエーションには、相手の立場を理解し、自己の主張を明確に伝え、創造的な解決策を提案する能力が求められます。
 
 

【2】傾聴

傾聴は、相手の話を積極的に聞き、理解しようとするスキルです。単に言葉を聞くだけでなく、話し手の感情や意図を把握し、共感的な態度で接することが重要です。効果的な傾聴には、適切なアイコンタクト、うなずき、相づちなどの非言語コミュニケーションも含まれます。信頼関係の構築と問題解決に欠かせないスキルといえるでしょう。
 
 

【3】リーダーシップ

リーダーシップは、集団や組織を目標に向かって導く能力。ビジョンを設定し、メンバーを鼓舞し、適切な指示や支援を行うことが求められます。効果的なリーダーシップには、状況に応じて柔軟に対応する力、的確な判断力、コミュニケーション能力が不可欠です。また、メンバーの強みを活かし、チームの成長を促進する役割も担います。組織の成功に大きな影響を与える重要なスキルです。
 
 

【4】プレゼンテーション

プレゼンテーションは、情報や提案を効果的に伝達するスキル。成功するプレゼンテーションには、いくつかの要素が必要です。まず、内容を論理的に構成することが大切です。導入、本論、結論という流れを意識し、聴衆が理解しやすい順序で情報を提示しましょう。また、適度なアイコンタクトや効果的なジェスチャーを用いることで、聴衆との信頼関係を築くこともできます。
 
 

【5】コーチング

コーチングは、個人やチームの潜在能力を引き出し、成長を支援するスキルです。指示や助言ではなく、適切な質問や傾聴を通じて、相手自身が解決策を見出すプロセスを促進します。効果的なコーチングには、信頼関係の構築、目標設定の支援、フィードバックの提供が含まれます。個人の成長やパフォーマンス向上に貢献し、組織全体の発展にも寄与する重要なスキルです。
 
 

【6】コミュニケーション

コミュニケーションは、情報や感情を相互に伝達し、理解し合うスキルです。言語的・非言語的手段を用いて、明確かつ効果的に自己表現し、相手の意図を正確に理解することが求められます。効果的なコミュニケーションには、状況や相手に応じた適切な伝達方法の選択、積極的な傾聴、感情のコントロールが重要です。あらゆる人間関係や組織活動の基盤となる不可欠なスキルです。
 
 

【7】ファシリテーション

ファシリテーションは、グループの活動や議論を円滑に進行し、効果的な結果を導き出すスキルです。中立的な立場で参加者の意見を引き出し、建設的な対話を促進します。効果的なファシリテーションには、目的の明確化、適切な場の設定、多様な意見の調整が求められます。また、グループダイナミクスを理解し、適切に介入する能力も重要です。会議や研修、問題解決の場面で活用される重要なスキルです。
 
 

周囲から人間性が疑われてしまう振る舞いの例とは?

ヒューマンスキルに欠けている場合は、ビジネスシーンで「周囲から人間性を疑われてしまう」ケースがあるでしょう。そうした振る舞いの例には、たとえば「自己中心的な行動」があります。

そして自己中心的な行動には、たとえば「他人への配慮が欠けた物言い」や「他責思考」が挙げられます。
実際のビジネスシーンでは、異なる利害を調整する柔軟なコミュニケーション力が必要です。
関わる人の一人ひとりに対するリスペクトが無ければ「異なる利害の調整」はできないでしょう。またビジネスがうまくいかなかったとして「◎◎のせいだ!」と他責的な振る舞いをしていては、周囲に不安感やストレスを与えてしまうでしょう。
仮に理不尽なことがあったとしても、まずは自分に何ができるのかを考えるというポジティブな振る舞いをした方が遥かに周囲から信頼を得られます。
 
 

人間性を養うには何をすればいい?

人間性を養うためには、自己反省や人への敬意など、実際に行動することが必要です。普段の生活の中で行える「人間性を養うためにできること」を5つご紹介します。
 
 

【1】自分の行動を客観的に振り返る

自己反省は、人間性を高めるための第一歩。日常の仕事の進め方や考え方について、失敗したことや成功したことを振り返り、次に同じ状況に直面した時にどう対応するかを前向きに考えることが大切です。 自分の行動や言動を客観的に見つめ直すことで、改善点を見つけることができます。
たとえば、毎日の終わりに、その日の出来事を振り返り、自分の対応が適切だったかを考えます。こういった習慣を続けると、自分自身への理解が深まり、感情や行動をよりコントロールできるようになるでしょう。物事の考え方や仕事への意識、モチベーションも上がります。
 
 

【2】ルールを守り、マナーを身につける

ルールを守り、マナーを身につけることは、人からの信頼を得るために重要で、人間性を高めるために、すぐに取り組めることです。ルールとは社会人として守るべきもの、マナーは人に不快な思いをさせないために必要なこと。意識するだけでも大きく変わります。
日常生活では、約束の時間を守ることや、挨拶を忘れないことなどです。
社会や組織の一員として、ルールを守り、適切なマナーを持つことは人としての基礎で、社会人として最低限のモラルと考えましょう。
 
 

【3】コミュニケーションスキルを磨く

コミュニケーションスキルを磨くことは、円滑な人間関係を築くために重要です。自分の意見を正しく伝え、相手の意見をしっかり聞くことで、良い人間関係を築けます。たとえば、話を聞くときの態度。親身になって話を聞いてくれる人には誰でも信頼を置くでしょう。
良いコミュニケーションは、誤解を防ぎ、相互理解を深められ、チーム内の協力が促進され、業務の効率向上が期待できます。
 
 

【4】多様な見方を知る

多様な見方を知ることで、柔軟な思考と理解力を高めることができます。ビジネスでは、置かれた立場や役割、思惑や感情による見方の違いによって事が複雑になることがあります。意思決定をスムーズにするためにも、多様な視点で物事を判断し意思決定までマネージできるようになることが大切です。
もし「提案がなかなか刺さらない」「メンバーが意欲的に協力してくれない」と感じることがあれば、自分の視点だけで物事を見てしまうことに原因があるかもしれません。異なる視点や意見を理解することで、自分の考えを深め、他者との共感を得やすくなります。
 
 

【5】他者に敬意を払う

他者に敬意を払うことは、信頼関係の基盤を築くために重要。関わる相手には尊敬の念をもって接しましょう。人は、相手が自分より年齢や立場が下であることを理由にして、相手を敬う気持ちを失ってしまうことがあります。 敬意を持って接することで、相手も自分を尊重してくれるようになります。いい人間関係が構築され、協力しやすい環境が生まれます。
リーダーの役割を持つ人なら、部下の意見を尊重しつつ指導を行うことで、チーム全体の雰囲気が良くなるでしょう。
 
 

まとめ

ビジネスにおけるヒューマンスキルは、テクノロジーが進化しても人とのつながりを強めるために欠かせないもの。ネゴシエーションや傾聴、リーダーシップ、プレゼンテーションなど、いろいろなスキルが互いに関わって、職場をより良い環境にしてくれます。
また自己反省や多様な視点を持つこと、他者に敬意を払うことなど、日常生活での小さな行動も人間性を高めてくれます。ヒューマンスキルを磨いて、より良いコミュニケーションと信頼関係を築いていきましょう。