【初心者向け】いまさら会社では聞けない「IT」の基礎知識:IT業界やIT用語の初歩を解説

仕事をしている多くの人が日常で「IT」に触れていますが、そもそも「IT」とはなにかということを考えたことはありますか? いまさら人には聞けないその意味をご紹介します。

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働き方のひとつとして定着したテレワーク。そもそもテレワークの定義とは「情報通信技術(ICT)を活用し、時間や場所を有効活用できる柔軟な働き方」。ICTはITとほぼ同じ意味のため、つまりテレワークにはITは不可欠な技術ということになります。

このように生活に結びついている人も多い「IT」。しかしあまりに日常的に「IT」という言葉が使われていて、その意味については「考えたことがない」し「いまさら社内で質問しづらい感じがある」という人もいるのでは? そこで今回は「IT」の基礎知識について解説します。
 
 

そもそも「IT」とは?IT業界の種類

ITとは「Information Technology(情報技術)」の略称で、コンピューターやインターネットを使って情報を扱う技術全般を指します。
IT業界は多岐にわたりますが、主に5つの分野に分類されます。
 
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インターネット(Web)業界

インターネット(Web)業界はWebサイトやWebアプリケーション、モバイルアプリを通じてサービスを提供する業界。SNSやeコマース(ネット通販)、スマホゲーム、キュレーションなどはいずれもインターネット(Web業界)に含まれます。
主なサービス例は以下の通りです。
概要 サービス例
SNS インターネット上のコミュニティサービス X、Instagram、LINE
eコマース(ネット通販) インターネット上のショッピングサービス Amazon、楽天
キュレーション インターネット上に点在する情報をまとめて配信するサービス スマートニュース
スマホゲーム スマホ向けに提供されるオンラインゲーム パズル&ドラゴンズ、モンスターストライク

通信業界

通信業界は光回線やCATV、モバイル通信(4G・5G)など様々な通信インフラを提供する業界です。パソコン、スマホ、タブレット、IoT機器などでインターネット接続を利用する際のインフラです。
国内の代表的な企業にはソフトバンク、NTTドコモ、KDDI、楽天モバイルなどが挙げられます。
 
 

ソフトウェア業界

ソフトウェア業界は、パソコンやスマートフォン向けのアプリケーションソフトを開発・販売する業界です。オフィスソフトや会計ソフト、ゲームソフトなど、幅広い製品を扱っています。
国内の代表企業は日本オラクル、トレンドマイクロ(ウイルスバスターの開発企業)などです。
 
 

ハードウェア業界

ハードウェア業界はパソコンやその他周辺機器などを製造・販売する業界です。国内企業としては富士通、日立、NEC、東芝などがハードウェア業界を代表する企業として有名です。 またパソコン以外のハードウェアとしては、企業向けのプリンターや複合機などが該当します。また近年はIoT家電の人気が徐々に高まってきており、家電やセンサーのシステム開発を担当できる組み込みエンジニアの採用ニーズも拡大してきています。
 
 

SI(システムインテグレーション)業界

SI(システムインテグレーション)業界とは、クライアント企業から依頼を受けたシステムの企画・開発・導入・保守を請け負う業界です。
クライアントは多岐に渡り、たとえばソフトウェア業界の企業が自社のみではカバーしきれない大規模開発の一部を外注する場合もあれば、非IT企業が社内で使うシステムをSI業界の企業に委託する場合もあります。
国内の代表的な企業にはNTTデータなどが挙げられます。
 
 

「ITスキル」って何を指す言葉?ITスキル標準(ITSS)が策定する職種やレベル

先にご紹介したように、IT企業は主に5つの業種に分けられます。そして5通りの業種のうち、どの分野で就業するとしても「ITスキル」は確実に求められます。

とはいえ、よくよく考えると「ITスキル」とは曖昧な言葉ですよね。何を身につければ「ITスキル」を身につけたことになるのか、意外と分かりづらい概念です。

そうした時に参考になるのが、情報処理推進機構(IPA)が定める「ITスキル標準」です。ITサービスの分野11職種38専門分野ごとに、最高で7段階のレベルを定めています。つまりまずは11職種のうち、どれを目指すかを決めると続いて「そのうちどの専門分野を極めていくのか」「どれくらいのスキルを目指すのか」が見えてきます。

よって、まずは11職種をチェックし、それらがどんな仕事なのかを理解すると良いでしょう。
 
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なおITの専門職と言えば「エンジニア」というイメージがあるかもしれませんが、実際にはIT業界には非エンジニア職も沢山あり、なおかつそれらの職種もITスキル標準(ITSS)が定める11職種に含まれています。
つまり、たとえば自分自身にプログラミングスキルが無いからといって「IT職種に就けない」ということは一切ないため、ご安心ください。ただしプログラミングスキルが無くとも、IT知識そのものは求められます。IT知識を身につける中で、最低限の学習は必要になる可能性は高いです。

たとえばITスキル標準(ITSS)のうち、非エンジニア職に該当するのは「マーケティング」や「セールス」「カスタマーサービス」「エデュケーション」など。 逆にエンジニアに該当するのは「ITアーキテクト」「ITスペシャリスト」「アプリケーションスペシャリスト」などです。
更なる専門分野や7段階のスキルの内訳などは、情報処理推進機構(IPA)の公式Webサイトでご確認ください。
ITスキル標準(ITSS) | デジタル人材の育成 | IPA 独立行政法人 情報処理推進機構

ITスキル標準(ITSS) | デジタル人材の育成 | IPA 独立行政法人 情報処理推進機構

ITスキル標準(ITSS) | デジタル人材の育成 | IPA 独立行政法人 情報処理推進機構

情報処理推進機構(IPA)の「ITスキル標準(ITSS)」に関する情報です。

覚えておいて損はないITスキルの例

ITスキルは大きく分けて、技術的な「ハードスキル」と対人的な「ソフトスキル」に分類されます。ここでは、それぞれの代表的なスキルを紹介します。
 
 

【ハードスキル】プログラミング言語

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ITスキルの中でも、代表的なスキルはやはり「プログラミング」です。たとえばスマートフォンで「朝6時にアラームを鳴らす」といった定型的な処理も、裏でプログラマーが書いたプログラム(=作業指示書)をコンピュータが機械語で理解し、実行することで「音が鳴る」というアウトプットが行われています。

そしてプログラム(=作業指示書)を書くには、プログラミング言語を覚えてコードを書くことが必要です。代表的なプログラミング言語にはJavaScriptやRuby、Python、PHPなどが挙げられます。
言語がたくさんあることに抵抗感がある方も少なくないかもしれませんが、実際には1つの言語を覚えれば他の言語も覚えやすいです。「とりあえずJavaScriptだけやってみよう」というような感覚で、どれか1つを一通り齧ってみることをおすすめします。
 
 

【ハードスキル】デジタルマーケティング

デジタルマーケティングは、インターネットやデジタル技術を活用して行うマーケティング活動です。
 
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デジタルマーケティングにはSEO(検索エンジン最適化)、SNSマーケティング、コンテンツマーケティングなどが含まれます。

これまでのマーケティングは顧客の元に直接訪問して営業したり、テレビや新聞などのオールドメディアなどに広告を出すといった手法が主流でした。しかし90年代~00年代以降はインターネットの発展により、デジタルマーケティングが新たなマーケティング手法として定着。

ちなみにデジタルマーケティングの中でも、特にWebのマーケティングに特化したものが「Webマーケティング」と呼ばれています。
 
 

【ハードスキル】ネットワーク知識

アプリケーションを作ったり、運用するよりはその根底にある「インフラそのもの」に関心がある方もいるでしょう。
この場合、シェルスクリプト(Linuxで利用する一連のコマンド)の理解に加え、以下のようなスキルが求められます。

・TCP/IPプロトコル
・LAN/WAN
・ルーターやスイッチなどのネットワーク機器の役割と設定
・ファイアウォールやVPNなどの技術

近年は「AWS」に代表されるクラウドコンピューティングが発展しており、ITに強い関心を持っている方でもこれらのネットワーク知識はあまり知らないというケースは少なくありません。また専門性が高く、自学自習が難しい分野であることも事実です。現実的にはITインフラ関連の職種に就いて、サーバールームでマシンを触りながら覚えることの方が多いかもしれません。
ただしハードウェアやネットワークに触れた経験が多いほど、ネットワーク知識が自然に身につきやすいことも事実です。たとえば「自作PCを自分で組んでみる」「AWSやGCPに触れ、ヘルプを読みながら自分で各種設定を行ってみる」といったことは効果的です。
 
 

【ソフトスキル】マネジメント

ITプロジェクトを成功させるためには、技術的なスキルだけでなく、マネジメントスキルも重要。プロジェクト管理、リーダーシップ、コミュニケーション能力、問題解決能力などが含まれます。これらのスキルを磨くことで、チームを効果的に導き、顧客や上司とのやり取りをスムーズに行うことができます。
 
 

覚えておいて損はない、会社でよく使われるIT用語6選【ITトレンド篇】

会社の中ではITに関連する専門用語が数多く使われています。ここでは、近年よく耳にする6つのITトレンド用語を「代表例」として解説します。トレンドの用語の意味を何となく理解しておくことで、社内の雑談の意味や、他の社員の会議での発言の意図などが把握しやすくなるでしょう。
 
 

【1】SaaS

SaaSは「Software as a Service」の略で、インターネットを通じてソフトウェアを提供するサービス形態を指します。ユーザーはソフトウェアをインストールすることなく、ウェブブラウザを通じて利用できます。たとえば、GoogleドキュメントやSalesforceなどがSaaSの代表例。
 
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パッケージソフト型の場合は初期費用が高く、ソフトウェアの更新やメンテナンスはユーザー側で行う必要がありますが、SaaSは初期費用が低く、スケーラビリティが高いというメリットがあります。コスト効率やスケーラビリティを重視する企業におすすめ。

【2】クラウドサービス

クラウドサービスは、インターネットを通じてコンピューティングリソース(サーバー、ストレージ、ソフトウェアなど)を提供するサービスです。
 
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ユーザーは必要な時に必要な分だけリソースを利用でき、初期投資を抑えることができます。代表的なものに、Amazon Web Services(AWS)やMicrosoft Azureなどがあります。

【3】ビッグデータ

ビッグデータとは、端的にはその名の通り「大量のデータ」のことを指します。たとえばソーシャルメディアの書き込みやECサイトの購入履歴、ウェブサーバー上のアクセスログや、GPSの位置情報などビッグデータに該当するものは多岐に渡ります。
これらのビッグデータを統計的に解析し、マーケティング活動に役立てたり、AIの機械学習に役立てる動きが近年は活発化しています。
 
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SNSやIoTデバイスなどから生成される膨大なデータを分析し、ビジネスに活用することが注目されています。

ビッグデータの活用にはデータサイエンスの知識や非構造化データの管理やラベリングのスキルなどが必要です。
 
 

【4】SFA・CRM

SFA(Sales Force Automation)は営業支援システム、CRM(Customer Relationship Management)は顧客関係管理システムを指します。
 
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これらのシステムを導入することで、営業活動の効率化や顧客満足度の向上を図ることができます。

SFAとCRMは密接に関連しており、SFAで営業進捗を管理し、CRMで顧客管理や問い合わせ対応、データ分析などを行うという関係にあります。この2つが統合されたソリューションとして提供されることも多くなっています。
代表的なSFA・CRMにはセールスフォースが挙げられます。
 
 

【5】ローコード・ノーコード開発

ローコード開発は、プログラミングの知識がほとんどなくても、視覚的なインターフェースを使ってアプリケーションを開発できる手法です。
 
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そしてノーコード開発は、さらに進んでコーディングを全く必要としない開発手法を指します。これらの手法により、簡単なWebページ制作やアプリケーション開発のコストは大きく低下しています。Webサイト構築や運用、更新、機能追加のハードルが下がっています。
またIT部門以外の社員でもアプリケーション開発に挑戦する余地が生まれています。
代表的なノーコード開発のプラットフォームには「STUDIO」が挙げられます。
 
 

【6】RPA

RPA(Robotic Process Automation)は、入力作業や転記といった単純作業を記憶させた「ロボット」を使って、定型的な業務プロセスを自動化する技術です。
 
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データ入力、請求書処理、レポート作成など、人間が行っていた単純作業をRPAツールで自動化することで、業務効率の向上と人的ミスの削減を図ることができます。多くの企業で導入が進んでおり、働き方改革の一環としても注目されています。

代表的なRPAツールには「UiPath」が挙げられます。
 
 

覚えておいて損はない、会社でよく使われるIT用語9選【ITの基礎篇】

ITの基礎知識を知るには「トレンド用語」だけではなく、「サーバー」など一般的な用語についても理解しておく必要があります。とはいえこれらの基本的な用語の意味を、改めて社内で質問するのは「初歩的過ぎて恥ずかしい」と思う方もいるでしょう。
そこで社内で頻繁に使用されがちな、ITの基礎用語9つを解説します。
 
 

【1】サーバー

サーバーは、他のコンピューター(クライアント)にサービスを提供するコンピューターのことです。Webページの閲覧やメール送信など、様々なコンピュータやソフトウェアからの要求(リクエスト)に対して、データや処理結果を返す「司令塔」のような存在です。
 
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ウェブサーバー、メールサーバー、データベースサーバーなど、様々な種類があります。そしてサーバーは「コンピュータ」であるため、従来はサービス提供者が物理的なサーバーコンピュータを用意し、維持・管理するのが一般的でした。
しかし近年はクラウドサービスの普及により、物理的なサーバーを自社で保有せず、クラウド上の仮想サーバーを利用する企業が増えています。
 
 

【2】フロントエンド

フロントエンドは、Webサイトやアプリケーションのユーザーインターフェース(UI)部分を指します。ユーザーが直接操作する画面やボタン、フォームなどの設計と実装を担当します。HTML、CSS、JavaScriptなどの技術を使用して開発を行います。ユーザー体験(UX)を重視した設計が求められる分野です。
 
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ちなみに関連する用語に「バックエンド」がありますが、こちらはユーザーの目に見えない部分で、アプリケーションの機能やデータ処理を担当する業務。バックエンド開発者は、サーバーサイドのロジック、データベース管理、セキュリティなどを扱います。
 
 

【3】UI

UI(User Interface)は、ユーザーとコンピューターシステムとの接点となる部分を指します。グラフィカルユーザーインターフェース(GUI)やコマンドラインインターフェース(CLI)などがあります。使いやすく直感的なUIを設計することは、製品やサービスの魅力や申し込みメリットをユーザーに伝えるうえで重要な意味を持ちます。
 
 

【4】データベース

データベースは、データを1つに集約するための場です。大量のデータを効率的に管理・検索・更新するためのシステムです。
たとえば顧客情報や企業情報を「氏名・会社名」「担当者の役職」「住所」「資本金」「問い合わせ日時」「営業ステータス」など様々な項目によって整然と管理することで、必要な時に「担当者が部長職以上の企業からの問い合わせで、営業ステータスが止まったままになっている案件に再アタックしよう」といった意思決定がしやすくなります。こうしたマーケティング活動などをデータから支えているのが「データベース」です。
企業の基幹システムや、ウェブアプリケーションのバックエンドなど、多くの場面で利用されています。
 
 

【5】SQL

SQL(Structured Query Language)は、リレーショナルデータベースを操作するための標準的な言語です。データの挿入、更新、削除、検索などの操作を行うことができます。
先に述べた「データベース」から必要な情報を検索したり、情報を更新するために必要なプログラミング言語が「SQL」だと理解すると良いでしょう。
データベース管理者やデータアナリストにとって、SQLは必須のスキルとなっています。
 
 

【6】フレームワーク

フレームワークは、アプリケーション開発を効率化するための枠組みや基盤となるツール群のことです。プログラミング言語ごとに様々なフレームワークが存在し、たとえば国産プログラミング言語として知られる「Ruby」の場合、代表的なフレームワークにはRuby on Railsが挙げられます。
またRuby on Railsはリッチなアプリケーション開発に適しますが、シンプルなアプリケーションであれば「Sinatra」も一定の支持を集めています。 アプリケーション開発の際にはこのようにプログラミング言語選びと並んで「フレームワーク選び」も重要なプロセスです。
 
 

【7】要件定義

要件定義は、システム開発プロジェクトの初期段階で行われる重要なプロセスです。顧客のニーズや問題点を明確にし、開発するシステムの機能や性能、制約条件などを具体化します。適切な要件定義を行うことで、プロジェクトの成功率が高まり、後工程での手戻りを防ぐことができます。
 
 

【8】アジャイル開発

アジャイル開発は、柔軟性と迅速性を重視したソフトウェア開発手法です。短い期間(スプリント)で機能を少しずつ開発し、顧客のフィードバックを得ながら改善を繰り返します。変化に強く、顧客満足度の高い開発が可能ですが、チーム全体の高いスキルと密なコミュニケーションが求められます。
 
 

【9】ウォーターフォール開発

ウォーターフォール開発は、要件定義、設計、実装、テスト、運用という工程を順序立てて進める伝統的な開発手法です。各工程が明確に分かれているため、進捗管理がしやすく、大規模プロジェクトに適しています。一方で、途中での要件変更に弱く、完成までに時間がかかるというデメリットもあります。
 
 

ITに苦手意識がある場合、何から勉強すればいいの?

ITに苦手意識がある場合、まずは基礎的なコンピューターリテラシーから始めるのがおすすめ。書籍やオンライン学習サイト、動画教材などを活用すれば独学でも勉強可能。また、実際に手を動かして練習することが大切です。分からないことがあれば、IT関連のQ&Aサイトや技術ブログなどで調べる習慣をつけることで、徐々に知識が身についていきます。

ITスキルは一朝一夕には身につきませんが、継続的な学習と実践を通じて、着実にスキルアップすることができます。自分のペースで少しずつ学んでいくことが、ITの苦手意識を克服する近道となるでしょう。