【2023】ワークライフバランスに必要な取り組みと具体施策、企業の好事例をコクヨが解説

企業にとって推進が求められる「ワークライフバランス」。本記事ではワークライフバランスとは何か、ワークライフバランスに必要な取り組みと具体的な施策、企業の好事例や国の支援策などを画像付きでコクヨが解説します。

ワークライフバランスとは「仕事と生活の調和」のことを指します。
 
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政府が策定した仕事と生活の調和(ワーク・ライフ・バランス)憲章では、「誰もがやりがいや充実感を感じながら働き、仕事上の責任を果たす一方で、子育て・介護の時間や、家庭、地域、自己啓発等にかかる個人の時間を持てる健康で豊かな生活ができるよう、今こそ、社会全体で仕事と生活の双方の調和の実現を希求していかなければならない」としています。

つまりワークライフバランスとは、

・就労による経済的自立が可能
・健康で豊かな生活のための時間が確保できる
・多様な働き方・生き方が選択できる

こうした社会の実現を目指す考え方であり、個人と企業双方の取り組みが重要です。
 
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ワークライフバランスが実現すると、個人にとっては家庭と仕事を両立し、仕事以外の趣味や地域活動に時間を充てることができるという利点があります。一方、企業側も人口減少社会に備え多様な人材を確保でき、離職率の低下を抑えられるなどの利点があります。

今回はワークライフバランスを整えるために具体的な取り組みを解説します。
 
 

ワークライフバランスはどのように整えればいいのか?

ワークライフバランスをどのよに整えればいいのか、企業が取り汲むべき主な課題を解説します。
 
 

残業時間の削減 | 一人当たりの残業時間削減を目指そう

ワークライフバランスを整えるためにまず求められるのが、残業時間の削減です。
 
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月40時間~50時間の残業とは、毎日2時間~3時間の残業が続いている状態。残業対策で大切なのは、過度に負担を強いられている社員はいないか、上司がチェックすることにあります。適度に仕事量を分散させたり、担当メンバーを見直したりすることで、一人当たりの残業時間削減を目指すことができます。

仕事と育児・介護の両立支援 | 働き方の多様化を認めることが支援につながる

育児や介護に直面し、この職場で働き続けたいと思いながらも離職する人は多く存在します。育児・介護との両立支援制度の整備は、人材不足が進む現在の日本で特に重要になってくるでしょう。
また、労働時間に柔軟な働き方や、可能な業務内容であれば出社勤務からテレワーク勤務へと切り替えることができるなど、 働き方の多様化を認めることが仕事と育児・介護の両立の支援につながります。
 
 

フレックスタイム制や裁量労働制、テレワークの導入 | 人材確保の観点からも重要

新型コロナウイルスの感染拡大によりテレワークの導入が急速に進みましたが、たとえばテレワーク勤務を容認すれば遠方に住む人を雇うことができるなど、人材確保の観点からも多様な働き方を認めることは今後増々重視されていくでしょう。
また、時短勤務やフレックスタイム制など、労働時間に柔軟な働き方を認めることにより、仕事と育児・介護の両立の支援にもなります。
 
 

企業のワークライフバランスに向けた取り組み例

実際にワークライフバランスに向けて取り組む企業をご紹介します。
 
 

サイボウズ株式会社 | 「100人いたら100通りの働き方」がモットー

 

サイボウズ株式会社では「100人いたら100通りの働き方」があってよいとの考え方の下、メンバーそれぞれが望む働き方の実現を目指しています。(出典:サイボウズ公式ホームページ)

ソフトウェア開発のサイボウズ株式会社では、2005年に離職率が28%と過去最高を記録し、それ以降ワークライフバランスに配慮した制度や、社内コミュニケーションを活性化する施策を実施しました。その結果、現在の離職率は3~5%程度まで抑えられたそうです。
 
 

SCSK株式会社 | 有給休暇取得率90%

「働きやすい、やりがいのある会社」を目指し、業界でいち早く残業時間の削減と有給休暇の取得率向上を中心とする働き方改革に挑戦しています。(出典:SCSK株式会社公式ホームページ)

SCSK株式会社では、2014年3月期より開始した「スマートワーク・チャレンジ」は、「平均残業時間を20時間/月以下、年次有給休暇を100%取得する」ことを目標に推進し、2016年からは「いつでもどこでも働ける」新しい働き方の実践・定着を目指し、「どこでもWORK」を開始しました。自宅やサテライトオフィスなどでの勤務を推進する「リモートワーク」、リモートワークの阻害要因となる紙を印刷と保管の両面から削減する「ペーパーダイエット」、座席を固定化しないフレックスアドレスのほか、集中席やファミレス席などを導入し、多様な働き方ができるオフィスをつくる「フレキシブルオフィス」の3つの施策を展開。
 
 

第一生命保険株式会社 | 両立支援制度と柔軟な働き方の二本柱を推進

第一生命保険株式会社では、両立支援制度の充実と、柔軟な働き方の推進の二本柱でワーク・ライフ・マネジメントの推進に取組んでいます。(出典:第一生命保険株式会社公式ホームページ)

保険・金融商品を提供する第一生命保険株式会社では、産前・産後休暇の100%有給化や、育児サービスの経費補助等の子育て支援など、両立支援制度が充実しています。
さらに、総労働時間の縮減や、テレワークの活用など柔軟な働き方を推進してワークライフバランスの実現を目指しています。
2022年度からは男性社員の育児参画推進に向けて「男性社員の累計1か月以上の育児休業取得100%」を会社目標とし、セミナーの実施等を行っています。
 
 

コクヨ株式会社 | 法定以上の両立支援制度の充実!テレワークの普及推進も

コクヨ株式会社では、働き方改革とダイバーシティ&インクルージョンにより、「幸福」「健康」を意味するWell-beingを、社内でも社会でも実現することを目指しています。(出典:コクヨ株式会社公式ホームページ)

ワーク&ライフスタイルカンパニーを目指しているコクヨ株式会社では、産前6週間/産後8週間の産前産後休暇を認めるなど、出産育児、介護、再雇用などについて、法定以上の両立支援制度の充実を図っています。加えて、コアタイムの無いフレックスタイム制を導入し、多様な働き方を推進しています。
テレワークも積極的に取り組んでおり、社内に留まらずテレワークの普及推進を目指して当サイト「在宅百貨」を通じた啓蒙活動にも取り組んでいます。
 
 

ワークライフバランスの実現に必要な取り組み | 政府はテレワーク普及促進を明言

平成19年12月に、経済界、労働界、地方の代表者、有識者から構成される「ワーク・ライフ・バランス推進官民トップ会議」において、「仕事と生活の調和(ワーク・ライフ・バランス)憲章」および 「仕事と生活の調和推進のための行動指針」が策定されました。

厚生労働省「仕事と生活の調和」

このようにワークライフバランスは政府レベルでも積極的に推進されており、特に情報通信技術(ICT)を活用し、時間と場所を有効に活用できる柔軟な働き方であるテレワークは「子育て・介護と仕事の両立の手段となるなどワーク・ライフ・バランスの実現」を可能とする手段として重視されており、テレワークの普及促進について政府全体で取り組んでいます。
 

厚生労働省ではテレワークの普及促進政策のひとつとして、「テレワークの適切な導入及び実施の推進のためのガイドライン」を公開しており、企業として導入する際に参考になります。

ワークライフバランスの実現に役立つ国からの各種支援制度

ワークライフバランスを実現するために役立つ、企業が利用できる国の支援制度をご紹介します。
 
 

育児プランナー、介護プランナーの訪問支援

厚生労働省は、中小企業に対して、社会保険労務士等の専門家である「仕事と家庭の両立支援プランナー」による、育休復帰支援プラン・介護支援プランの策定についての無料で支援を行っています。
出産予定の従業員や、介護に直面し休業制度を利用したい従業員などがいる事業者の方で、「どういった形で社内規程を策定すればいいのかわからない」場合にサポートを受けられます。
 
 

両立支援助成金

両立支援等助成金は、仕事と家庭の両立支援に取り組む企業に対して、都道府県労働局から一定の助成金が支給される制度です。支給されるには各条件を満たし、申請することが必要です。支給されるコースは以下の5種類があります。

・出生時両立支援コース(子育てパパ支援助成金)
・介護離職防止支援コース
・育児休業等支援コース
・不妊治療両立支援コース
・新型コロナウイルス感染症に関する母性健康管理措置による休暇取得支援コース
 
 

働き方改革推進支援助成金

働き方改革推進支援助成金は、労働時間の短縮や休息時間の確保に取り組む企業に対して、都道府県労働局から一定の助成金が支給される制度です。支給されるには各条件を満たし、申請することが必要です。支給されるコースは以下の4種類があります。

・労働時間短縮・年休促進支援コース
・勤務間インターバル導入コース
・労働時間適正管理推進コース
・団体推進コース
 
 

まとめ |ワークライフバランスは「明日への投資」

ワークライフバランスの実現と一口に言っても、働く立場からは充実した仕事と豊かな生活を両立させるのはそう簡単なことではないですし 、雇用者である企業にとっても両立支援制度の拡充や多様な働き方に対応できるよう整備することは、人的にも経済的にも負担がかかります。
「仕事と生活の調和(ワーク・ライフ・バランス)憲章」では、「仕事と生活の調和の実現に向けた取組は、人口減少時代において、・・・企業にとって『コスト』としてではなく、『明日への投資』として積極的にとらえるべきである」としています。この視点を大切に、ワークライフバランス、ひいては「ディーセント・ワーク(働きがいのある人間らしい仕事)」の実現を目指すことが重要となります。