会社員が副業で会社(マイクロ法人)を設立する意味はある?メリット・デメリット

副業は当たり前になりつつありますが、会社員をやりつつ副業の事業を会社化する意味はあるのでしょうか。メリットとデメリットをご紹介します。

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副業の自由化やテレワークの普及が進む中「副業から得た収入が安定してきたので、コワーキングスペースなどで登記して法人化すべきでは?」と考える方も少なくないでしょう。たとえば「会社員をしつつYouTuberとしても一定の収入がある」「会社員をしつつ、在宅の副業でプログラマーと投資をしており、投資を別会社にしたい」といったケースが考えられます。
 
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たとえば渋谷ヒカリエに位置するコクヨが運営するコワーキングスペース「Creative Lounge MOV」も一部の契約プランで法人登記に対応しています。

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この記事ではマイクロ法人設立の意義と、そのメリット・デメリットについて詳しく解説します。
 
 

会社員が副業で会社を設立する意味はあるの?節税メリットはある?

事業を会社化する理由の一つとして、節税を挙げることができます。しかし、社長である自分が会社員である場合、節税メリットはあるのでしょうか。
 
 

マイクロ法人の設立が節税で注目を集める

「マイクロ法人」とは、基本的に経営者ひとりだけで運営している会社のこと。副業の所得が500万円を超えてくると、マイクロ法人を設立した方が節税になります。
 
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この図は、個人事業主の所得にかかる税金と法人の税金のおおよそを比べたもの。所得にかかる税金は年間の所得500万円~600万円くらいから、法人税の方が安くなっているのが分かります。

設立した会社にテレワーク規定を作れば自宅でも仕事ができる

会社を設立すると「働く場所が制限されるのでは?」「登記をしたオフィスに出社しないといけないのでは」と思う方もいるかもしれません。
しかし、たとえばコワーキングスペースを使って登記したとしても、必ずしもそのコワーキングスペースで仕事をしなければいけないというわけではありません。就業規則にテレワーク規定を設けることで、これまでと変わらず、自宅など好きな場所で仕事をすることが可能です。
 
 

将来的に自営型テレワークを始める場合にも窓口の法人として役立つ

この記事をお読みの方は、本業の会社員とは別に、自宅でのテレワークなどを通じて副業を別途行っている方が多いでしょう。
ですが「自宅でのテレワークの副業」については、たとえば「事業拡大を見越して、借り入れをしたい」といった場合に社会的信用がやや薄いです。つまり副業をもっと本格化したい際に困る場面が色々とあるかもしれません。
立ち上げた法人が社会的信用の確保などに役立ちます。とりあえず節税目的でマイクロ法人を作っておくのも良いでしょう。後々でその法人が「副業を本業化した場合」にも色々と便利になるかもしれません。
 
 

会社員が副業で会社を設立すべきタイミングは?

副業で得た利益が増え、税負担の軽減や事業の拡大を図りたい場合、マイクロ法人の設立を検討するタイミングとなります。詳しく見ていきましょう。
 
 

会社設立によって「税務上有利になる」タイミング

会社設立が税務上有利になるタイミングは、個人事業主の利益が増えてきた時点で考えられます。先述した通り、目安となるのは所得が500~600万円になったタイミング。
個人の税金が法人税を上回り始めるため、法人化による税率の低減が期待できるからです。
 
  

会社設立によって「ビジネスが広がる」タイミング

一般的に法人は個人事業主よりも社会的な信頼があり、より大きなビジネスチャンスを引き寄せる可能性もあります。たとえば借り入れなどを行う場合、個人事業主ではなく「株式会社」を設立したうえで株を担保にできた方が資金調達の手段が広がります。
 
 

会社設立時に「配偶者が代表になってくれる」タイミング

配偶者が代表になってくれる場合も、会社設立のいいタイミングといえます。たとえば夫が会社員で、妻が新会社の代表になる場合、夫は会社の給与に課税され、妻は役員報酬に課税されます。つまり夫と妻の所得分散ができます。
また夫の名義を一切使わず、夫に対する役員報酬もゼロにすることで、税金の流れなどからは「夫が副業でマイクロ法人を行っている」状態とは映らなくなります。
仮に夫が副業禁止の企業に転職する機会があっても、妻の会社は「(夫の転職とは)関係ないもの」として続けていくことができるでしょう。
 
 

会社員が副業で会社(マイクロ法人)を設立するメリット

マイクロ法人設立のメリットには、個人のリスク管理の強化や税務上の利点が挙げられます。また、事業の正式性を高め、資金調達や事業拡大のための基盤を築くことができます。それぞれ見ていきましょう。
 
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責任範囲が有限のため「経営者個人のリスク」が軽減される

法人としての設立は、事業における責任を法人に限定することで、経営者の個人資産を事業の負債から守る効果があります。
 
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たとえば会社の倒産時に1,000万円の負債があった場合、出資金は返済に当てられますが、その出資金を引いた負債金を経営者個人が負う必要はありません。なお、これは経営者が負債の連帯保証人になっていない場合のみです。

これにより、事業の失敗や訴訟などの不測の事態が発生した場合でも、経営者の個人資産は基本的には安全といえます。
 
 

配偶者に役員報酬の支払いができる

マイクロ法人では、必ずひとりで経営しなければならないわけではありません。たとえば給与収入のない配偶者を役員にすることで、その役員報酬を経費として計上することが可能。プライベートカンパニーのため、税金をコントロールしやすくなります。
 
 

融資が受けやすい

法人は個人事業主よりも金融機関からの信用が得やすく、必要な資金調達が比較的容易になります。 事業をより伸ばしたいという場合に資金面での心配が少なくなります。
 
 

赤字の繰越期間が長くなる

個人事業主は赤字の繰越期間は3年ですが、法人では10年繰り越すことができます。
 
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そのため、初期の投資回収期間における税負担を軽減することができます。

所得税・住民税や社会保険料の軽減になる場合がある

先述した通り、所得が大きくなってくると、個人事業主ではなく法人を立ち上げた方が節税になります。そのため、売上が高くなってきた場合は法人化を考えましょう。
 
 

消費税の免税事業者になれる可能性も

個人事業主であってもそうでなくても、課税売上が1,000万円を超える場合は課税事業者となり、消費税を収める必要があります。しかし、最初の2年間はこれが免除され、さらに法人化すると、さらに2年免除となります(資本金が1,000万円以下の場合)。
つまり、正しいタイミングで法人化することで、消費税の免税事業者である期間を延ばすことが可能です。
 
 

自動車などを設立したマイクロ法人に売却するのも有り

個人が所有している自動車や不動産などの資産を立ち上げた法人に売却することで、経費計上が可能。節税に繋がります。
ただし、売却する資産は必ず会社で使うことが前提です。
 
 

会社員が副業で会社(マイクロ法人)を設立するデメリット

マイクロ法人設立のデメリットには、設立にかかる費用や手間、決算処理の複雑さ、社会保険への加入義務などがあります。 それぞれ紹介していきます。
 
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会社設立自体に費用と手間がかかる

法人を設立する際には、登記費用や定款認証費用など、初期費用が必要です。 また、設立には複数の手続きが必要であり、時間と労力がかかることを理解しておく必要があります。
 
 

決算処理に手間がかかる

法人の決算処理は、個人事業主に比べて複雑。多くの書類作成と細かなルールが伴います。 そのため、税理士などの専門家の支援を受けることが一般的です。
 
 

給与・報酬を支払うと社会保険に加入が必要

法人として給与や報酬を支払う場合、社会保険への加入が必要となります。 これにより、社会保険料の支払いが発生し、経営コストが増加する可能性があります。
 
 

赤字でも税金がかかる

個人事業主の場合、赤字であれば所得税や住民税の納税義務が生じませんが、法人は赤字であっても、法人住民税の均等割りが課されます。マイクロ法人を設立する際には、赤字であっても発生する税金について理解し、計画的な資金管理を行いましょう。
 
 

会社員が副業で会社(マイクロ法人)を設立する流れ

会社員がマイクロ法人を設立する際の一般的な流れをご紹介します。
 
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会社名・所在地を決めて印鑑を作る

会社設立の最初のステップは、会社名と所在地を決定し、法人用の印鑑を作成すること。
所在地は自宅でも可能ですが、最近ではコワーキングスペースでの登記も可能。また、法人用印鑑はネット上でも注文できます。
 
 

法務局の無料相談に行く

法人設立について理解するために、法務局で行われている、会社設立に関する無料相談に行くのもおすすめ。
なお、ウェブで案内してくれる場合もあるため、管轄の法務局に問い合わせてみましょう。
 
 

定款の作成

定款は、会社の基本的なルールを定める重要な文書です。日本公証人連合会公式ホームページから記載例をダウンロードできるほか、インターネット上にもテンプレートが多数あるので、自分で作成することができます。
 
 

登記申請

登記申請は法務局で行えるほか、郵送または法人設立ワンストップサービスからオンラインで行うことも可能です。
たとえば自分が住んでいる場所と会社の設立する場所が遠い場合などは、郵送またはオンラインがおすすめです。
 
 

銀行口座開設

法人としての取引を行うためには、法人専用の銀行口座が必要です。
なお、法人の銀行口座は審査のハードルが高いため、会社や事業の実態が分かる書類を用意しておくことをおすすめします。
 
 

行政(税務署・市役所・年金事務所など)への届出

法人設立後は、最寄りの税務署で「法人設立届出書」「青色申告承認申請書(青色申告を希望する場合)」や所得税・法人税・消費税に関する届出をする必要があります。
また、都道府県税事務所へは「法人設立届出書(地方税関連)」、市区町村の役所へ「法人設立届出書(住民税関連)」を提出します。
さらに、年金事務所には社会保険関係の届出(健康保険、厚生年金保険、雇用保険)が必要です。
 
 

自営型テレワークへの切り替えのタイミングはいつがいい?

自営型テレワークへの切り替えは、副業としての収入が安定し、事業拡大の可能性が見込まれる時が適切です。 また、ライフスタイルの変化や働き方の多様化に合わせて、タイミングを見極めることが重要です。
 
 

まとめ

副業解禁やテレワークの浸透、法人登記が可能なコワーキングスペースの増加といった流れを受けて「会社員が副業を、コワーキングスペースなどで法人登記する形で法人化」という選択肢が一般的になりつつあります。
マイクロ法人設立は、節税効果や事業の信頼性向上などのメリットがありますが、設立と運営にはコストと手間がかかります。
副業としての法人設立を検討する際には、これらのメリットとデメリットを総合的に考慮し、専門家のアドバイスを求めることが賢明です。

以上、コクヨが運営するテレワークメディア「在宅百貨」がお届けしました!