コロナ禍入社の若手コクヨ社員が語る「社内BAR運営のススメ」! バーは会社にどう役立つ?

コロナ禍入社の若手コクヨ社員が語る「社内BAR運営のススメ」! バーは会社にどう役立つ?

コロナ禍を経て、仕事関係の飲み会は「減少傾向」にあると言われています。また2021年に行われた一部調査では、「職場での“飲みニケーション”が必要か不要か」という問いに対して、61.9%の人が「不要・どちらかと言えば不要」とも回答しています。

すると企業で人事担当者や総務担当者を務める方の中には「若手社員の本音や希望をフランクに知るには、どうしたらいいのだろうか」といった悩みを抱える方もいるのでは。従来の飲みニケーションは、社内で繋がりを作るための場という側面もあったためです。

実は『在宅百貨』を運営するコクヨでは、コロナ禍入社世代の坂内 辰徳さんの取り組みがきっかけとなり、「社内BAR」が飲み会とは全く異なる社員同士の交流を生む場として機能し始めています。 コロナ真っ只中に入社し、入社後すぐにリモートワークを行った世代の若手が「社内交流の大切さ」に開眼した理由は何なのでしょうか?
そもそも社内BARは、会社にどう役立つ場なのでしょうか?

坂内 辰徳さん(若手コクヨ社員)

優秀だった同期が、社内でその存在をあまり知られなかったばかりに、能力を発揮できない状況が続き、ついには退職してしまった

坂内 辰徳さん(若手コクヨ社員)

ということを、コロナ禍でのショッキングな出来事及び社内BAR運営のきっかけとして語る坂内さん。
コクヨで働くとともに、オフィス内で社内BAR「BANNAI'S BAR」を自主企画として運営する坂内さんに、詳しくお話を聞きました。

坂内 辰徳


1996年生まれ。新潟県出身、東京都在住。
子供のころから「人に楽しんでもらうこと」「なにか作ること」が好きで現在もイラスト制作や社内BAR運営やアプリ開発など、いろいろな活動を行っている。
コクヨでは「働く」領域で新規事業開発に取り組んでいる。

コロナ真っ只中で新社会人になったからこそ感じる「社内交流」の重要性

– 坂内さんは2020年4月に新卒でコクヨに入社しました。新型コロナの真っ只中で新卒入社するのは「思っていた社会人デビューとは違った」のではないでしょうか?

違いました。入社式も無ければ集合研修も無く、配属されてからも先輩社員との接触は少なく一人自宅で業務をこなす毎日でした。

業務に直接絡む点で言うと、やはり先輩との交流が無いことで、十分な業務知識を得られないまま仕事をこなすのが難しかった記憶があります。また社内の繋がりが少ないことで「なんかつまらないな」と感じていましたし、新しい情報に触れない日常に少し危機感を覚えたりもしていました。

 
– 「同期や先輩との関係性が薄くて、困る」という声は当時、他の新卒社員の方からも上がっていましたか?

はい、みんなも自分と同じようなことを話していました

そしてある同期は、スキルや能力を持っていたのにそのことが広く社内で知られなかったせいもあってか、やりたいことができない状況が続き、ついには退職してしまいました。このことにはとても考えさせられました。僕は「みんなが楽しく過ごせる世界を作りたい」という思いを根本的に持っている人間なので……。
それから「社内の関係性が深まれば、今よりもっとみんなが楽しく働けるようになるのでは?」と思うようになりました。その結果、2023年4月からBANNAI'S BARを開くことにしました。

 

コクヨの社内交流を推進する「BANNAI’S BAR」!BARは会社にどう役立つ?

– コクヨ社内で運営している「BANNAI'S BAR」とはどのようなものですか?
 

・みんなが楽しく過ごせる世界を作りたい
という思いを原点に、社員が楽しく働ける状態を作るために、運営している社内BARです。

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コクヨの社内BARの様子(坂内さん提供)

社内の関係性が希薄だと、

1.なんかつまらない、寂しい
2.新しい視点やアイデアを得にくい
3.スキルや能力を発揮する機会が得にくい
4.やりたいことに挑戦する機会が得にくい

といった状態が生じます。

こういった状態を解消するには、まず社員同士の関係性を深めることが必要で、そのための場として社内BARを運営しています。

 
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コクヨの社内BAR「BANNAI'S BAR」の活動目的(坂内さん提供資料より抜粋)

 

こちらは来店時に500円を支払っていただくことで「ビールやカクテル・ノンアルコールカクテルが飲み放題」という仕組みで実施しています。
業務外で勝手にやっている活動なので、会社からの補助などはなく、お酒は皆さんから頂いたお金や活動に共感してくれた方からの寄付でまかなっています。こうした取り組みを通じ、社内の「接触」「相互理解」「協働」のサイクルが回転していくことを狙っています。

 
– 「接触」「相互理解」「協働」のサイクルとは何か、もう少し詳しく教えてください。

社員同士の関係性を深める、というのは口で言うのは簡単ですが実現にはそれなりにステップが必要です。そのため実際に関係性を深めるには、

1.社員同士で接触してもらう
2.相互に理解を深めてもらう
3.協働が生まれる
4.協働の中でさらに新しい接触が生まれる

といったような形で、上記の「接触」「相互理解」「協働」のサイクルを回すことが必要だと考えています。

 
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「接触」「相互理解」「協働」のサイクル(坂内さん提供資料より抜粋)

「接触」「相互理解」「協働」それぞれの項目の質を高め、かつ全体のサイクルを高速で回すことで、より効率的に社内の関係性を深めることができるでしょう。

そして質の高い「接触」「相互理解」「協働」の実現と、サイクルを高速で回す手段として、社内BARはすごく適したものなのではないか、という手ごたえを運営する中で得られています。

 

社内BARは「飲み会」と何が違うのか

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コクヨの社内BARの様子(坂内さん提供)

– 素朴な疑問なのですが、社内BARでのお酒を飲みながらの交流は「飲み会」とは別物なのでしょうか?

別物です!
以下のような違いが「会社の飲み会」と「社内BAR」にはあります。

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コーヒースタンド・飲み会・社内交流イベント・社内BARの違い(坂内さん提供資料より抜粋)

飲み会は業務で関わる人、同じ部署・プロジェクトのメンバー、同期など「既に関わりのある人達」同士での開催になるケースが多い上、1回顔を出すと数時間かかってしまいがちです。仮に勤め先に飲み会補助があり、代金を経費で落とせたとしても、参加に対して腰が重い方は多いはずです。たとえば終業後も趣味や勉強、子育てなどで忙しい社員は、飲み会にはなかなか行きにくいと思います。

一方で社内BARは普段は絶対に繋がらないような人たちが集まるのと、毎週、社内の同じ場所に行けばやっていて、参加に必要な費用も時間も負担が少ないです。社内BARであれば仕事終わりに1杯だけ飲んで帰ることもできるので、参加しやすいです。
また社内BARは「500円で飲み放題」のように、料金を低価格に設定しやすいです。
先輩が後輩を数人連れてきて奢ってもさほど負担にならないので、人を誘いやすいという特徴もあります。

 

社内BARは「社内イベント」「社内のコーヒースタンド」と何が違うのか

飲み会に比べ様々な人が参加しやすく、社員の接触・相互理解が進むものには「コーヒースタンド」や「社内交流イベント」もありますよね。しかし、それとも「社内BAR」は異なると思っています。

 
– 具体的な違いは何でしょうか?

まず社内イベントは参加側にとっては、交流の場として優れています。参加費も拘束時間もない参加ハードルの低いイベントもあると思います。
一方で運営側にとっては場所や予算の確保や広報など、負担が大きく高頻度で実施するのが難しいです。
そのため「接触」「相互理解」の機会を効率よく提供しようとすると、やはり他の手段も検討することになるはずです。

 
– 確かに「BAR」と同じくらいのペースで社内イベントを開くのは難しいかもしれませんね

 

すると社内BARと比較対象になるのは「コーヒースタンド」です。
そして両者を比較すると、社内BARの方が所属や年代を超えた出会いが生まれやすいと考えています。
コーヒースタンドは同じ部署同士の人が小休憩で利用することが多い場所ですし、アルコールの提供はありません。
社内BARならば終業後に一杯飲もう、という方が部署の垣根を超えて集い、新たな出会いが気軽に生まれやすいです。
そのため、仮に既に社内に飲み会文化やイベント文化、カフェ文化があったとしても、それとは別に「社内BAR」を作るのは十分に価値があると思います。

 

社内BARを運営して得られた「成果」は何?

– 実際に社内BARを運営してみて、得られた「成果」は何だと思いますか?

まず一つは、BARに来てくれた人が「新しい気づき」や「アイデア」を得やすくなったことです。 僕自身も新規事業開発を行っているのでBARで仲良くなった人と事業アイデアについて話したりするのですが、全然違う部門の人から新しい視点を貰う事で企画がアップグレードできた経験があります。

キャリア入社のオンボーディングプロセスにも「社内BAR」が役立つ!

BARに来てくれた人が社内で気軽に話せる人が増えて楽しく働けるようになったケースが少なくないことも成果だと考えています。新入社員やキャリア入社の人から、たびたび「コクヨに入社したての頃に社内BARで繋がった人と、いまだによく交流している」という話を聞きます。
特に大企業では、キャリア入社すると「ほかの部署の人とは話す機会すらなく、飲みに行くチャンスもない」ということが珍しくないはずです。BARのように気軽にとりあえず一杯安く飲める場は、オンボーディングのプロセスでも役立つのだと思います。
だからこそ「BARで出会った社内の人間同士で交流が続いている」という声を貰えるのは、社内BARを運営する醍醐味の1つですし、嬉しいです。

そしてこれはまだ事例が少ないのですが、BARに来てくれた人がスキルや能力を発揮できる機会が生まれたことも成果です。BARで居合わせた「社内人材を探している部長」と「異なる部署の若手」が気軽な会話をきっかけに、協働に発展したケースがありました。このマッチングは、その部長が同じ部の若手と飲むだけでは生まれなかったものなので、社内BARの存在価値を強く感じました。日常の業務をこなすだけでは絶対に繋がらない人同士が繋がる可能性があるのが、BARの良さだと思います。

またその他の思いがけない効果としては、BARに社内の人だけでなくお客様や近隣の企業の社員さんが来てくださることが増えたことです。BARが社外との接点として機能し始めていると感じます。

– 社内BARを運営してみて、率直に感じている「課題」もあれば教えてください

 

最終的に実現したい状態に挙げている「スキルや能力を発揮しやすい」「やりたいことに挑戦しやすい」状況を作るためには、前段階として社員同士の「接触」「相互理解」が必要です。しかし実際には、相互理解1つをとっても実はさらに細かいプロセスがあるということを最近は考えています。
たとえば、異なる部署同士の社員が初めてBARで話す場合には

1.名前と部署を知る
2.スキルや能力を知る
3.今後やりたいことを知る

と、協働に至るまでは数段階の深堀りが必要だと思います。そして単に一回、BARでお酒を飲むだけでは、数段階の深堀りが一気に進むのは簡単ではないとも感じています。
接触を生む場所としての社内BARのあり方には強く手ごたえを感じているので、「相互理解」がぐっと進む工夫をどんどん行いたいです。

社内BARをこれから新しく始める際に大事な「4つのこと」

– 似たような社内BARの取り組みを、他社の人事担当者や若手社員の方などが行いたい場合、最初にすべきことや注意点はありますか?

「実施場所」「メニュー」「動機づくり」「運営の自動化」の4つは、やってみたからこそ分かるのですが、本当に重要です!

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社内BAR運営のキーポイント(坂内さん提供)


まずは「実施場所」です。社内BARを作ったからといって、その場所がオフィスの僻地では来る人が限られます。極端な話、社内BARはエントランスでやるのが最適です。

続いて「メニュー」です。少ないメニューで営業することをお勧めします!
お酒がたくさんあった方が人が来る、と思う方も多いのではないでしょうか?僕も最初、いろんなお酒があった方がみんな喜んでくれると思い、お酒の種類をとにかく大量に揃えました。
しかし8割方の人はハイボール、ビール、ジントニックを飲んで終わりです。加えて種類が増えると補充も運搬も手間が大きくなるので、必要最小限に絞って営業するのが良いです。

そして「BARに行きたくなる動機づくり」を上手に作るという点も、意識しましょう。BARに行く動機が薄いと、結局「お酒好きの社員だけが入りびたる場」になってしまうリスクがあるためです。

最後は「運営をなるべく自動化すること」です。運営が属人的な場合、責任者が多忙になったり、病欠するだけで交流の場が失われてしまいます。

こうした4点を踏まえて、BANNAI’S BARでは次の展開として「お酒入り冷蔵庫」+「アイテム付きテーブル」をエントランスに設置する、という案を練っている最中です。
アイテム付きテーブルというのは、ラウンドテーブルの上に麻雀の卓やボードゲームやスポーツを中継しているテレビなど、何かしらのアイテムが置いてあるテーブルをイメージしています。
そのアイテムに興味がある人たちがふらっと立ち寄り、近くの冷蔵庫から出したお酒を飲みながらテーブルの上でゆるく交流する中で、いつの間にか社内のネットワークが強化されているという狙いです。これならお酒の提供も自動でできるので、属人的な運営からも一歩脱却することができます。

2年近く社内BARをやってきて、大変なこともたくさんありましたが、自分自身もBARをやっていなければ絶対に知り合わなかったであろう人と繋がることができ、その結果たくさんの良いことがありました。この記事を読まれた方は、ここでお話させていただいたポイントを押さえれば比較的苦労せずによい結果だけを受け取ることができると思うので、もし興味が沸けばぜひ社内BARに挑戦してみてください!

坂内 辰徳さん Instagramアカウント

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今回インタビューした「BANNAI'S BAR」を運営するコクヨ社員、坂内 辰徳さんのInstagramアカウントはこちら!