佐渡島庸平さん
編集者・株式会社コルク代表取締役社長CEO
2002年に講談社へ入社し、週刊モーニング編集部で『ドラゴン桜』(三田紀房)、『働きマン』(安野モヨコ)、『宇宙兄弟』(小山宙哉)などの編集を担当。2012年には講談社を退社し、クリエイターのエージェント会社『コルク』を立ち上げた。作家・クリエイターと直接契約し、作品編集、著作権管理、ファンコミュニティ形成・運営などを行い創作をサポートしながら、これまでの出版流通の形の先にあるインターネット時代のエンターテイメントのモデル構築を目指している。
理想の環境である福岡を拠点に、東京に通うスタイルを実現
移住してきて1年ほど経ちましたが、改めて引っ越して良かったと思っています。東京は家賃も高いですし、人が多い。それに比べて福岡はコンパクトシティで、とても住みやすく気に入りました。在宅ワークという働き方が一般的になったことで、自分が快適だと思える場所で過ごすことができることは幸せだし、以前はオフィスでの打ち合わせが中心でしたが、今は好きなレストランで打ち合わせすることだってできます。
なにより、福岡は食材が新鮮で美味しいんです!野菜なんかはシンプルにそのままの味が抜群ですし、飲食店は高級店とかでなくとも、ふらっと入った店がとてもいいお店だったり。福岡に住んで、クオリティオブライフが上がったなと感じています」
「自宅から空港が近くて、タクシーですぐなんです。朝いちばんに移動すれば道も空いていますから、6時10分に家を出れば7時発の飛行機に乗ることができて、9時から東京で人と会うことだって余裕です」
そのため、東京に住んでいた時と比べても全く不便さはないといいます。東京では新規事業関連の人とリアルで会って打ち合わせをすることが多く、逆に福岡の自宅ではオンラインの打ち合わせが中心。
東京生活では1人の時間を増やすことを意識し、本を読んだり映画を観たり美術館に行ったりといったインプットの時間を取り入れ、クリエイティブが刺激される機会がより増えたのだそう。
毎日使うランプやスピーカーは机のすぐそばに。
オンラインを工夫することでリアルもよくするという考え方
オンライン打ち合わせが増えたことで導入したのが動画解析AIサービス『I'm beside you』です。打ち合わせ中の表情を分析してレポートにしてくれるものなのですが、たとえば自分ばかりが一方的にしゃべっている時間があればそれを指摘してくれる。基本的に人は20秒単位で会話が往復するのが理想で、それ以上になってしまうと心理的安全性がない状態になってしまう。だからデータを活用しつつ、自分の状態を把握することが大切です」
仕事の合間にお茶を楽しむ器も、福岡で見つけて気に入ったもの。
「データを活用することになって以来、『インタラクティブに会話するにはどうしたらいいか』を意識しながらリアルでも話すようになりましたね。他にも、打ち合わせ中の自分の笑顔の量なども解析してくれるのですが、これもオンラインでないとできないことだと思います」
社内のチャットツールでも分析を取り入れ、リモート中のメンバー同士、お互いの稼働時間を明確化することで、コミュニケーションをよりスムーズにできるよう取り組んでいるとのこと。「データがあれば互いに仕事がしやすくなる」と考え、オンラインのコミュニケーションが増えたことをきっかけにリアルでのコミュニケーションもより良くしていこう、という発想はさすがです。
部屋のコンセプトは『過去と未来が、現在で交差する』
「3~4世紀ぐらいのガンダーラです。祖父が買ったのも数十年前みたい」
この机を中心に、手に届く範囲、目に見える範囲にお気に入りのアイテムが揃う
両親が買って小学生のときに部屋に置いてくれたディケンズの小説の挿絵
一方、机の向こう側には未来を象徴するものを集めたいと考えていて、壁には瀧本幹也さんの写真を飾っています。『宇宙兄弟』の仕事をしていた時に出会ってカッコいいな!と感動して買ったものです。これから室内の壁や窓の外にも植物も増やしていき、僕の目の前の視界は植物が成長していく様子を見れるようにしようと思っています。机を中心に『過去と未来が、現在(=リメイクした机)で交差し、更新されていく』というイメージですね」
「出会ったとき、そのかっこよさに感動!ご本人から直接買わせてもらいました」
糸島で手に入れた愛用のコーヒーメーカーの近くには、漫画の編集の仕事に関連して贈られた北斎の漫画も飾る。
佐渡島さんの原点でもある漫画の仕事につながる北斎をいつでも見られる場所に。
机から見える景色はこれからもっと植物も増やして進化させていくつもり。
禅や仏教にハマり中。日本で一番短いお経、「延命十句観音経」を壁に飾っている。
お客さんが来た時に座るソファー。ご自身も夜に瞑想をするスペースとして愛用中。
「インテリアも含め、まだ自宅でやりたいことがたくさんあります!今後もさらに部屋の居心地を良くして、在宅ワーク空間を快適なものにしたい」と話す佐渡島さん。自分が最高のパフォーマンスを発揮できる環境づくりの道程は、これからも続いていきそうです。