山口絵理子さん
1981年埼玉県生まれ。慶應義塾大学総合政策学部卒業。ワシントンの国際機関でのインターンを経て、バングラデシュBRAC大学院開発学部修士課程に留学。2年後に帰国し「途上国から世界に通用するブランドをつくる」をミッションとして株式会社マザーハウスを設立。バングラデシュを始めとした6か国の自社工場・提携工房で、現地の素材と技術を活かしたバッグ、ストール、ジュエリー、アパレルのデザイン・生産を行う。日本国内34店舗、海外4か国にて販売を展開(2022年1月現在)。
在宅ワークの障壁はこんな工夫で解消、新商品も生まれた
ただ、やはり経営判断をする際や社員みんなの様子を把握するのにはオフィスにいたほうが良いこともありますから、今でも週に2回ほどはオフィスにいるようにしています。
ほかにも、私はコロナ以前は海外の工場にいることが多く、社内の会議などにリアルで参加する機会を多くは持てなかったのですが、最近、毎月の店長会で現場のスタッフと会話をする機会が増えたのはコロナ禍における大きな変化でしたね」
在宅ワークの時間が増えたことで、これまで以上にデザインに集中できたことから生まれた新商品もあるのだとか!
このように新しいアイディアが浮かび新商品が生まれるなど、在宅ワークの時間が増えて良かったことも。しかし、それまでバングラデシュ・ネパール・インドネシアなど海外の工場で直接コミュニケーションを取りながらモノづくりをしていた山口さんにとって、現地に行けないということは最大のピンチでもありました。
「最初はどうしよう!と思いましたが、そこは長年一緒にモノづくりをしてきた職人たち。LINEなども駆使しながら意思疎通できていると思います。特に、私が現地にいるときと進行スピードを変えないために、コミュニケーションはかなり工夫しましたね。たとえば、朝イチで型紙を作って動画を9時までに工場へ送り、職人たちが工場に到着したらビデオ会議で詳細なディテールを説明します。するとすぐにその日のうちに職人がサンプルを作成し、夜の国際郵便に乗せてくれるのです。距離があっても工場にいるのとほとんど変わらないスピード感で進められていると思います」
これまでとは異なる環境の在宅ワークでも変わらないコミュニケーションを実現するために、工夫をし続ける山口さん。さらに、昨年11月にお子さんが生まれたこともあり、働き方を見直そうとワークライフバランスについても試行錯誤の真っ最中です。
現在山口さんは朝5時に起き、朝ごはんの用意や保育園の準備、お子さんの着替えなどを済ませ8時には保育園に出発します。その後9時から仕事、お昼には1時間ほど気分転換のために外を歩きます。この時間に近所のカフェでランチをしたり、溜まっているメールを返したり、仕事のアイディアをゆっくり考えたりします。そして午後も仕事をしますが、そこにはマイルールが。
保育園から帰ってきてからはお子さんとの時間に集中。そしてお子さんが眠りについた21時以降は仕事をしたり、アトリエで趣味の絵を描いたりして過ごすのが日課です。
アトリエでの作業の相棒はデニムのエプロン
「これまでたくさんのエプロンを試したのですが、自分に一番フィットしたものだけが残って、それがこれです。デニム素材で身体になじむところがお気に入りですね」
「不思議とこの揺れが良いアイディアを生んでくれるんです。寝かしつけにも使えます」
軸となるのは、大好きなモノづくり
詳細はこちら:https://www.mother-house.jp/event-campaign/kadikapo-island/
在宅ワークで生まれた公私の相乗効果
「移動時間が減ったことで使える時間が増えたことは、私にとって大きかったと思います。カバン、ファッション、アクセサリーなど様々なジャンルの仕事、育児、家のことなど、カテゴリーをまたいで様々なことを行う中で、在宅ワークではすべての要素が一個所に集まっているのはメリットですよね」
社長業とデザイナーの仕事、そして育児の両立は大変なのではないか?という質問に対しては、「そのどちらもあるからこそメンタルが助けられている」と語っていた山口さん。コントロールの利かない育児の大変さも感じながら家族とのくらしの時間を大切に、一方で頑張るほど結果が出る仕事に打ち込んでバランスを取るといった、在宅ワークを通じた相乗効果を実現されていたのはさすがでした。
「子どもが、仕事で使う糸で遊んでいるのを見ているときに幸せを感じますね。これも在宅ワークをしなければ得られなかった時間だと思います。【週〇回は必ず出社する】と決めるのはあまり好きではないので、今後はその月ごとに重要な日数を決めて、状況に応じて柔軟に在宅ワークとオフィス出社の配分を決めていきたいと思います」