在宅冒険家 vol.5 : 元WOWOWアナが「話す場がない」コロナ禍を経て感じたテレワーク、ワーケーションの可能性

在宅冒険家 vol.5 : 元WOWOWアナが「話す場がない」コロナ禍を経て感じたテレワーク、ワーケーションの可能性

各界で活躍する方々のテレワーク、ワーケーション&ライフを深掘りする「在宅冒険家」。 今回は元WOWOWアナウンサーで、2014年には錦織圭選手の全米オープン準優勝の中継を担当した木村英里さんにインタビュー。 木村さんはコロナ禍以降、テレワークやワーケーションを大きく取り入れた働き方にシフトチェンジ。そのワークスタイルの変化や、そもそもコロナ禍の中で感じた等身大の葛藤についてお話を聞きました。

<木村英里 プロフィール>

テレビ静岡・WOWOWを経てフリーアナウンサーに。
WOWOWアナウンサー時代、2014年には錦織圭選手全米オープン準優勝を現地から生中継。
現在は、ラジオ、司会、ナレーションなどを担当しながら、地方創生アナウンサーとしても挑戦中。
全国で特産品開発や観光資源開発、PRのお手伝いをするとともに、バスケットボール専門メディアでの執筆なども行う。

元WOWOWアナウンサーがコロナ禍で対峙した「喋る場があるのが当然」ではない現実

―― 木村さんは元WOWOWのアナウンサ―で、現在はフリーで活動されています。「アナウンサー」はコロナの影響を最も大きく受けた職種の1つではないでしょうか。

木村:コロナ禍はそれまでの常識が通用しなくなってしまう出来事で、今後の人生について考え直すきっかけとなりました。喋る、書く、発信する場があることが当たり前ではないと知りました。スタジオや番組があってこそのアナウンサーなのに、番組自体が休止して「話す場がなくなる」というのを経験したのは初めてのことでした。
 
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木村:毎週土曜日にラジオの生放送番組のパーソナリティとして出演していましたが、番組の放送が休止。また、私はバスケットボール取材も行っていますが、プロバスケットボールリーグ「Bリーグ」のシーズンが中断してしまったのです。
アナウンサーとしてもう働けないのではないかという不安に襲われることも、一度や二度ではありませんでした。ラジオの放送休止が1か月以上に及んだ時には「こんなに話すことが好きだったのか、話す場がないとここまでストレスが溜まってしまうのか」と自分でも驚きでした。
 
 

「スタジオがなければ、カメラがなければ」からソーシャルメディアへの切り替え

――お話を聞いているだけで、胃がキリキリしてくるようです。当時の不安やストレスが伝わってきます。

木村:コロナ禍が想像よりも長く続き、徐々にどんな環境でも伝えることができるソーシャルメディアの価値を感じるようになりました。以前は「スタジオがなければ、ビデオカメラがなければ」と思っていましたし、当然、テレビやラジオなどマスメディアに重きを置いてきました。
でも、よくよく考えてみると、いまはiPhone一台あれば、取材も録音もできますよね。そこで具体的にはYouTubeや、VOICYなどの音声コンテンツなどにも挑戦を始めました。


――とはいえ一定のキャリアを重ねてから「仕事のスタイルを変える」というのは簡単では無いですよね……。

木村:やはり「iPhone一台で挑戦できる」「YouTubeや音声コンテンツなら自宅で収録できる」のは大きかったです。録音に使う機材がすぐ揃い、誰でも簡単に始められるのは本当に凄い時代だとも思います。
 
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木村さんが実際に使用しているスマートフォン向けの録音用マイクなど

木村:少しずつコロナ禍が落ち着いてきた頃から、私は「地方創生アナウンサー」としての活動を始めました。地方の情報発信や特産品開発のお仕事を、アナウンサーとしての経験を活かしながら担当させていただいています。なので地方のホテルに滞在する機会が以前より増えましたが、YouTubeやVOICYは、自宅で録音していた頃と変わらずホテルで同様に続けることができています。自宅でもがいていた頃の経験が、現在の仕事のスタイルの第一歩になったと思います。
 
 

アナウンサーがアフターコロナで体感した「取材」の現在地

――アナウンサーの仕事の魅力の1つは「取材」だと思います。取材のやり方も大きくリモートで変わったのでは?

木村:驚くほど変わりました。まずオンライン取材も増えましたし、Zoomを繋いでYouTube収録というのもごくごく普通のことになったように思います。iPhone一台で行う取材も多くなったように感じています。
食べ物を扱うお仕事では、もちろんいまでも現地へ赴きリポートすることがメインですが、配送いただき食リポしたこともありました。

――「食べ物関係」もオンラインというのは驚きです!

木村:このほかにも、たとえば「地方創生アナウンサー」としての仕事で言えば、単に取材をするだけでなく、特産品開発のお手伝いをさせていただいています。すると農家さんや漁師さん、飲食店など様々な事業者様とご一緒するんですね。最初は何度も地方まで足を運ぶものだと思っていました。

ですが思ったよりも、オンライン対応が進んでいるんです。もちろん顔合わせ、試食・試作会、取材など必ず現地へ赴く機会はありますが、そのほかはオンラインで進行していきます。
 
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木村さんが出向いた地方取材での撮影の一コマ

遠隔からでも地方創生のお手伝いができることは嬉しいですし、だからこそ自分に何ができるのか考え直すようになりました。
 
 

現地取材を重ねてきたからこそ感じる「リモート」の力

―― 現地に出向くのではなく「リモート」で仕事をする際、もどかしさを感じることはないですか?

木村:もちろん、ないわけではありません。たとえば実際に会場や、取材箇所にいなければわからない音、味、香りなど様々なものをオンラインでは把握できないという点は課題です。逆に言えばこれらの要素が重要な取材は、やはり対面で行うべきですし、私もアフターコロナでは現場取材の大切さを改めて感じています。当然、アナウンサーとしては「スタジオや番組があるからこその良さ」というのもありますし、その魅力は私にとっていまも昔も変わらないものです。
一方で、リモート重視ならではの魅力もあります。
昔は、取材に出ている間は、他の仕事ができないというジレンマがありました。しかし現在は、遠征先でも音声や映像収録ができます。並行して、別の場所から別のオンラインインタビューを行うことなどもできるのです。大きく変わりました。


―― アフターコロナは「対面」「オンライン」の魅力を改めて見つめ直すタイミングと言えそうですね。

木村:誰でも配信、発信ができる時代です。コロナ禍は、アナウンサーの価値を改めて考えるきっかけになりました。アナウンサーだからこそのトーク力、仕切り、取材力、そういった点での勝負が必要だと感じています。
 
 

働き方を変えざるを得なかったアナウンサーが見出したテレワーク、ワーケーションの可能性

―― 意地悪な質問かもしれませんが、やはりアフターコロナでは「対面」「外出」の方が楽しいと感じることは無いですか?

木村: 一人一人に適した「テレワーク」「リモートワーク」の形があると思うんです。私の場合はウィズコロナの時期は自宅でできるYouTube収録やVOICY収録がとても貴重な経験でしたし、いまでは地方創生やバスケ取材のお仕事の延長でワーケーションも楽しんでいます。ワーケーションはテレワークと対面の要素を両方持っていて、地方創生にも繋がるので素晴らしい働き方の1つだと思いますね。

―― たしかに!アフターコロナで注目される働き方の1つが「ワーケーション」だと思います。

木村:現在は平日は地方創生、週末はバスケ取材となかなか休日が取れないのですが、出張時の空き時間や時間に余裕があれば延泊をするなどして息抜きをするようにしています。
こうしたワーケーション的な働き方は、正直、始める前にはネガティブな印象が無かったわけではなありません。「仕事と言いつつ、ただの遊びになっちゃうんじゃないかな」という気もして。でも取り入れてみると仕事先や旅先に出かけるワクワク感があって、モチベーションが高いからこそ、とてもポジティブな気持ちで仕事に向き合うことができています。
この点は私にとっては、コロナ禍を経ての一番大きな気付きだったかもしれません。時世や年齢、その時々の状況に応じて新しいスタイルを模索することも決して間違いではないと思うことができました。

―― 木村さんにとって適した働き方の形の1つが「ワーケーション」なのだと感じます。

木村:私の場合はワーケーションをすることで、凝り固まった頭がスッキリしたり、新たなアイデアが浮かぶようになります。アフターコロナの中で、私にとっては一番いい働き方の1つが「ワーケーション」だと感じてます。
私は「100%リモート」というタイプではないので、時にはスタジオ、時にはワーケーション、時にはテレワークという形で、これからも私らしく挑戦していけたらと考えています。
この記事を読んでいただいている皆さんは一般企業にお勤めのビジネスパーソンの方が多いと伺っていますが、「出社の方が効率が良い」「テレワークの方が効率が良い」などと決めつけずに、一人一人が自分に適した働き方を見つけられる時代になればいいなと思いますし、そうした時代がすぐそこまで来ていると感じています!
 
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・木村英里 プロフィール テレビ静岡・WOWOWを経てフリーアナウンサーに。WOWOWアナウンサー時代、2014年には錦織圭選手全米オープン準優勝を現地から生中継。現在は、ラジオ、司会、ナレーションなどを担当しながら、地方創生アナウンサーとしても挑戦中。全国で特産品開発や観光資源開発、PRのお手伝いをするとともに、バスケットボール専門メディアでの執筆なども行う。


▶木村英里さんが執筆しているバスケットボールメディア「balltrip MAGAZINE
木村英里さん公式Instagram
木村英里さん公式X(旧Twitter)

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